88話 入学試験(前編)
僕は、カラン軍事学校の募集を始めたわけだが、ちゃんと人が来てくれるかは不安があった。何しろ、カランは人が少なく、また辺境のため、人気も無い土地だ。
そういうわけで好条件にしたのだが、実際の所、それが功を奏したのかはわからないが、もの凄い数の応募があった。3000人以上だ。今回、生徒にするのは100人なので、倍率30倍である。
「当然でしょう、世の中貧しい人が多いですし」
そういうヴァンダちゃん。まあ、確かにそうか……。
もちろん、グランテイルからもたくさんの魔族が応募してくれた。しかしいずれにせよ、全員合格と言うわけにもいかない。入学試験を行うことになった。
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カラン軍事学校、入学試験を行います。
指定の日に軍事学校に集え!
フェイ
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僕は応募者に、この手紙を送った。
軍事学校も順調に完成していった。農場では、シルヴィアさんとアーダちゃんが見た事もないような野菜を育てていた。
「そりゃ何です?」
僕は聞いた。
「紫芋じゃ。とても甘くておいしいんじゃよ」
そういうシルヴィアさん。
食料という意味では、米を育てたかったのだが、このカラン岬地区は水はけが良すぎるため、米はちょっと育たない。仕方ないので、大豆や麦、紫芋、葡萄、蜜柑、バナナなどのフルーツ類を育てることにした。魚も取れるし、食料は十分だ。
そして、入学試験当日。
3000人となると、やはりあり得ない人数だ。せっかく来てもらって申し訳ないが、たくさん落とさないといけない。
まずはランニングと称して、遠距離行軍の試験を行うことにした。常識的に考えて、体力が無いと務まるとは思えない。カランからハイランドまで走り、またカランに戻ってくる。
馬でも相当な距離だ。歩くとなるとかなりの苦行だ。当然、脱落者が続出した。ハイランドに到達し、また引き返す。
「ひいひい、もう駄目ー」
音を上げるドロテア。
「つ、辛いね。フェイは大丈夫なの?」
ヴァンダちゃんは聞いた。
「まあ、旅は慣れてるからね」
僕はそう言った。筋力には自信は無いけど、体力には自信がある。