84話 閉じた街
その日の夜、僕達はシルヴァレスト号と共に、カランへと戻った。
カランは相変わらず平穏だった。しかし、遠くに漁に出た漁師の中には、海賊と遭遇して船を焼かれ、命からがら逃げ帰った人も居るようだ。
海賊による被害は増え続けている。何とかしなければいけないが……、今すぐにどうにかすることもできないだろう。
その日僕は、疲れてすぐに寝てしまった。
次の日起きると、もう昼になっていた。僕が街に出ると、漁師たちが話し合っていた。
「あんたんとこもやられたのか」
「ひでえ連中だ。どうしようもねえ」
「困ったねえ。もう船も出せやしねえ」
本当に困っている漁師たち。海賊たちが我が物顔で闊歩している現状、どうにもならない。
「フェイ様、どうにかなりませんかねえ」
そう頼む漁師。
「……今すぐにはどうにもなりませんが、考えてみます」
僕はそう言った。
仲間の皆が起きると、僕は皆を集め、相談した。
「……というわけで、海賊の被害が多くなっている。どうすればいいと思う?」
僕はそう聞いた。
「どうも何も、海賊を倒すしかないんじゃないの?」
そう言うドロテア。
「そうは言っても、敵は海の上に居るのだぞ。簡単にどうなるものでもないだろう。第一、敵は火矢を使うようだ。船で近づいたらたちまち火だるまだぞ」
そう言うアドリアンさん。
「ドロテアの魔法で何とかならないか?」
僕は聞いた。
「それは難しいね。海の上で魔法を使うと、私達も巻き込まれるだろうから」
そう言うドロテア。
「厄介じゃな。大砲でもあれば叩きのめすことができるじゃろうが」
シルヴィアさんはそう言った。
「しかし今すぐ大砲を作るというわけにはいかないでしょう。火薬も必要ですし……」
アーダちゃんはそう言った。
「そもそも、ここはどういう街なんだ?」
そう聞くヴァンダちゃん。
「? どういう意味?」
僕は聞いた。
「地形とか、防備とかですよ。それもわからずにどうなるものでもないでしょう」
そういうヴァンダちゃん。確かにそうだな。
「んー、そうだね。ここは『カラン川』っていう川の河口のあたりの街だよ。複雑な湾があって、その奥にある街って感じかな」
僕は言った。
カランはちょうどファーランドの対極みたいな形状をしている。ファーランドが岬の先にある『開かれた街』ならば、カランは湾の奥に潜む『閉じた街』だろうか。
「仮にそれが本当だとしたら、湾口を封鎖すれば海賊を防げるのでは?」
そう聞くヴァンダちゃん。
「……なるほど。良いかもしれない。ちょっと湾口を見に行こうか」
僕は言った。
「わ、ワシは無理だぞ!」
そういうシルヴィアさん。太陽は苦手なようだ。