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不遇の錬金術師  作者: 秀一
第四章 魔族の国 グランテイル帝国編
79/146

79話 提案


 レフさんの部屋へと入った。

 

 質素な部屋だ。とはいえ、木製の家具は質が高そうで、品位はある。ファーランド共和国を支える元老の長として、ふさわしい部屋だろう。

 

 僕達は椅子に座り、向かい合った。レフさんが口を開く。

 

「グランテイルの視察、ご苦労様でした。どうでしたかな」

 そう聞くレフさん。

 

「驚きが多かったですね。収穫も多かったです。ただ、それらを形にするには時間がかかりそうですね」

 僕はそう言った。

 

「ふむ、そうか……。ただ申し訳ないが、君にはもっと重要な仕事をして欲しいのだ」

 そういうレフさん。

「というと?」

 僕はそう聞かざるを得ない。

 

「君はこのファーランド国の弱点は何だと思うね?」

 そう聞くレフさん。

 

「んー、そうですね。まあぶっちゃけた話、軍隊が弱い事でしょうか」

 僕はそう言った。

「だよな……。ワシもそう思う」

 レフさんは同意した。

 

 何しろ、大国なのに首都が陥落寸前に陥ったぐらいだ。普通そういうことにはならないだろう。

 

「では、何故この国の軍は弱いのだろうか?」

 そう聞くレフさん。

「考えてみれば疑問ですよね……。うーん、私にはちょっとわかりかねますね」

 僕は正直にそう言った。僕も今ではファーランドの一員みたいなものだが、新参者であることに変わりはない。

 

「そうじゃな……。まずは、傭兵に頼ってしまったところか」

 そう言うレフさん。

 

 傭兵に頼るのは確かに問題だ。傭兵はあまり真面目に戦ったりしない。金で雇われているだけだし。まあ、時には役に立つ事もあるのだが……。やはり自国の軍は必要だろう。

 

「それはありますね。ただ、ファーランド軍自体も武装は良かったと思うのですが」

 僕はそう言った。

 

「確かに武装は良い。だが、『軍事』を知っているものは少ない。ワシが思うに、それは君だけだと思うのじゃ」

 そう言うレフさん。

 

 確かに戦争においては、軍事について考える人が絶対に必要だ。僕は魔法学園で鍛えられていたから一応知っていたが……。

 

「この国には、軍事の専門家を育てる場所が無いのですか?」

 僕は聞いた。

「そうなのじゃ。困ったことだと思わんか?」

 そう言うレフさん。

 

 それは確かに困ったことだ。アルパはもちろん、コーネリアにも優秀な軍事家がたくさん居た。それは当然ないと困ることだ。

 

「確かに困りましたね。それで?」

 僕は聞いた。

「それで君に軍事学校を作ってもらいたいと思ってな」

 そんな事を言うレフさん。

 

「いやおかしいですよ! 僕は錬金術師なんですよ? 軍事学校を作るのは間違っているでしょう」

 僕はそう言った。

「もちろん君が錬金術師なのは良く知っておる。ただ、君がこれまで挙げた戦果を考えれば、間違いではないとは思うがね。もちろん予算は出そう。軍事学校と言っても、錬金術の研究に使ってもらっても構わんのだぞ」

 そう言うレフさん。

 

 そう言われると、確かにちょっと心は動くな。

 

「うーん、そうですね……。しかし、学校となると先生が必要では?」

 僕は聞いた。

「もちろんじゃが、それが居ないのが最大の問題でな。まあ、君は元々コーネリアの将軍だったんだから、コーネリア関係の教師を呼ぶことはできんかな」

 そう言うレフさん。

 

「そう言われましてもね……」

 僕は考える。

 

 コーネリアの将軍と言っても、僕は姫様に適当に任じられただけだ。コーネリアの将軍や指揮官を呼ぶなんて絶対無理だ。

 

 ……と思うが、例外が居た。シギスだ。彼ならやってくれるかもしれないな……。

 

「んー、まあ小規模ならできるかもしれませんね。色々試してみたい事もあるにはありますし……」

 僕はそう言った。

「お、そうか! やってくれるか!」

 超喜ぶレフさん。

 

「小規模ならですよ? 元老院は協力していただけるので?」

 僕は聞いた。

「もちろんじゃ。全面的に協力しよう。何、人や金が足りんならいくらでも送ってやるわい。とにかく、ファーランドは強くならねばならんのだ。そうは思わんか?」

 そういうレフさん。

「まあ、そうですね。海賊の事もありますし、今はファーランドが強くならないといけませんね」

 僕は言った。

「海賊?」

 そう聞くレフさん。

 

「僕達の乗って行った船も、アルパの海賊に焼かれてしまったんですよ。ご存じありませんでしたか」

 僕は言った。

「そうじゃったのか。そりゃ大変だったな。うーむ、海軍も強化せねばならんな……」

 そう言うレフさん。

「それについてもお願いしますよ。イリスの協力も欲しいですね」

 僕は言った。

「それは難儀じゃな。まあ、ワシも力を尽くすわい」

 レフさんはそう言った。

 


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