表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不遇の錬金術師  作者: 秀一
第四章 魔族の国 グランテイル帝国編
77/146

77話 シルヴァレスト号


「それでは、そろそろ大陸に戻ります」

 僕は魔王様にそう言った。

 

「うむ。そうか……。それは構わんが、船はあるのか?」

 そう聞く魔王様。グランテイルにはあまり船が無い。

 

「心配はないのじゃ。私がとっておきの船を出すからな!」

 そういうシルヴィアさん。

 

「シルヴィア殿もアーダも行くのか。寂しくなるな……」

 そういう魔王様。

 

 その日もささやかな宴を開いてくれた魔王様。揚げた鶏肉がたくさん並んでいる。

 食べてみるとサックサクで美味しい。

 

「美味しいですね。こんなに油があるんですか?」

 僕は聞いた。

「油やしの油だよ。この島、油は豊富なのだ」

 そういう魔王様。大陸では油は貴重だが、ここではそうでもないようだ。

 

「フェイが言うには、大陸には鉄がたくさんあるそうじゃ。ワシが持って帰ってやるよ」

 そういうシルヴィアさん。

「ありがたいが、海賊も多いし、無理はせんでくださいね」

 魔王様はそう言った。

「確かに、海賊は気になりますね。何とか出来れば良いんですが……」

 僕はそう言った。

 

 海賊が多いのでは、交易もできない。ファーランドとグランテイルの交易は絶対にすべきだが、海賊が居ては危険だ。何としても海賊を何とかすべきだろう。

 

「そう考えると、私達は大丈夫なのですか? せっかく船があっても、また海賊に襲われてしまうのでは……」

 カンデさんはそう言った。彼女はかなり怯えている。

 

「まあその心配はなかろう。夜出発するしな」

 そういうシルヴィアさん。

「夜? 何故ですか?」

 そう聞くカンデさん。

 

「私は吸血鬼だしな。昼間だと太陽に焼かれて死んでしまう。どう考えても、夜でないと無理じゃ」

 切実な事を言うシルヴィアさん。

「そ、そうでしたか。それは失礼を……」

 謝るカンデさん。

 

「師匠ったら、外で寝ててうっかり朝になって焼け死にそうになったとか」

 そんな事を言うアーダちゃん。ちょっと笑っている。

「笑いごとでは無いぞ! 寝てて死ぬとかヴァンパイアの笑いものになるわ……」

 そういうシルヴィアさん。

「うふふ、そうですね」

 面白かったのか、気が休まったらしいカンデさん。

 

「この島の『石油』についても、たくさん欲しいですけどね」

 僕はそう言った。

「いくらでも持って行ってくれて構わんのだがな。とにかく、海賊は何とかしたいが、ワシらでは何ともならん。大陸に帰ったら、何とか対策を考えてくれ」

 魔王様はそう言った。

「何とかしますよ」

 僕はそう言った。

 

 夜になった。僕達が海岸に行くと、巨大な銀色のイカダみたいなものがあった。後ろに巨大な扇風機が二つ付いている。

 

「なにこれ?」

 不審そうにするドロテア。

「聞いて驚け! これこそ我が発明、シルヴァレスト号じゃ!」

 そういうシルヴィアさん。

 

「イカダ……ですかね」

「イカダだな……」

 そういうカンデさんとアドリアンさん。

 

「断じてイカダではない! 見よこの銀色の美しきフォルム! これこそ新時代の船よ!」

 そう言うシルヴィアさん。

 

 しかし本当にこれで大丈夫なのか? さすがに不安だ。

 

「師匠を疑うわけじゃないですが……、とりあえずこれ、海に運びますか?」

 僕は聞いた。砂浜に置いてあったし。

「ああ、その必要は無いぞ。重いしな。これは水陸両用で、ここからドヴァーってなってギュイーンって行けるのだ!」

 そう言うシルヴィアさん。

 

「本当に大丈夫なんですか!? 何か怪しげな擬音が聞こえましたけど……」

 超不安そうな顔になるカンデさん。

「ガタガタ抜かすな。ほら乗った乗った!」

 そう言うシルヴィアさん。僕達は渋々乗った。

 

「んじゃ出発しましょうか。よっと」

 そう言ってパチリ、と火をつけるアーダちゃん。

 

 ゴオ、と火が付き、満載された水が急速に熱される。その蒸気が発され、歯車が回る。その力で、扇風機が回る仕組みだ。

 

 ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオと、もの凄い風が下向きに発動した。見えなかったが、実は下にも扇風機があったらしく、船体は浮いた。

 

「シルヴァレスト号、発進!!!!」

 シルヴィアさんが叫ぶと、アーダちゃんが後方の歯車を操作し、船体後部の扇風機を発動させた。ギュイーン! と船は砂浜を走り、海へと向かっていく。

 

 ドドドドドドド……、と海の上を滑っていくシルヴァレスト号。凄い速度だ。完全に帆船の最高速度を超越している。ヤバい。

 

「これ凄いんじゃないですか? こんなもの作って大丈夫なんですか?」

 逆に不安になる僕。

「にゃはははは! 私は天才だから良いのだ!」

 そう叫ぶシルヴィアさん。

 

 こうして僕達は、あっという間にファーランドへと帰還した。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ