76話 勉強
それからしばらく、僕はシルヴィアさんの下で錬金術を学んだ。
僕も錬金術師として、様々なものを作ってきた。だから錬金術については詳しいと思っていたけど、シルヴィアさんとアーダちゃんの技術たるや、桁外れだった。
何と言っても、この古代遺跡の中にある、古代ドワーフの技術をマスターしているのは大きい。その基礎技術に加え、独自のアレンジが色々加えられている。
シルヴィアさんの知識量の凄さも驚きだが、アーダちゃんの創造力というか発想力の高さも驚くべきものだった。特に蒸気のエネルギーを運動エネルギーに変換する技術、『蒸気機関』の応用力は高いだろう。上手く使えば、世の中を大きく変えられそうだ。
僕達は地下都市に籠り、ひたすらドワーフの文献に当たったり、実験したり、工作したりして過ごした。ドロテアもアドリアンさんも文句を言っていたが、まあ仕方ない。
そうして瞬く間に10日が過ぎた。もう大陸に帰らないといけない。
「師匠、ありがとうございました。勉強になりました」
僕はその日、シルヴィアさんにそう言った。
「む、もう帰るのか。まだまだ修行はこれからだぞ」
そういうシルヴィアさん。
「んー、でも仕方ないですよね。大陸の人ですし……」
そういうアーダちゃん。
「ていうか、師匠もアーダちゃんも、大陸に来ていただけませんか? そうすりゃもっと色々研究もできるし、世の中の役にも立てると思うんですけど」
僕はそう言ってみた。
「私にはこの遺跡を守る役目があるのだ。ていうか吸血鬼だし、太陽の当たる所は苦手だ……」
そういうシルヴィアさん。
「わ、私は行ってみようかな」
乗り気なアーダちゃん。
「本当に? 歓迎するよ、アーダちゃん」
そう言う僕。
「フェイさんとは色々勉強しましたし、まだまだ研究したい事もありますしね」
アーダちゃんはそう言った。
「師匠は本当に良いんですか? こんな所に引き篭もっているのも、あまり健康に良くないのでは」
僕はそう言った。
「まあそうかもしれんが……。そもそも、大陸で私が住めるところとかあるのか?」
そう聞くシルヴィアさん。
「ジャムルの鉱山とかなら行けるんじゃないですか。ノームたちが住んでますよ」
僕は言った。
「ノームか……。まあ嫌いでは無いけどな。大陸に私の知り合いでも居れば良いんだが」
そう言うシルヴィアさん。
「『剣聖』セラさんとかならいますけどね」
僕は言った。
「あいつまだ生きてたのか……。それじゃあ、たまには顔でも見に行こうかな」
乗り気になってくれたシルヴィアさん。
「お、師匠も行ってくれるんですね! これで安心ですね!」
そういうアーダちゃん。
「それじゃあみんなで行きましょうか。船はあるんですか?」
僕は聞いた。
「とっておきのものがあるよ」
そう言ってにやりと笑うシルヴィアさん。