75話 火薬
僕、アーダちゃん、シルヴィアさんの三人は、遺跡の中を見て回った。
遺跡の中には、様々なものがあった。かつてここにドワーフが暮らしていたであろう痕跡も多い。
シルヴィアさんが案内してくれたのは、工場だった。
大規模な工場だ。そこには、たくさんのゴーレムが作られていたようだ。石で作られたゴーレムが多い。
「ゴーレムですね。かつては動いたんでしょうか?」
僕は聞いた。
「そりゃ動いただろうな。今でも、上手く力を与えられれば動くだろうが……」
そういうシルヴィアさん。
とはいえ、肝心の力と言うのが難しいだろう。魔力か、それに相当する力が無いと、動くとは思えない。
見た事もない機械も多いが、目を引くのは巨大な青銅の筒。大砲だ。
「青銅砲ですね。銅はあるんですね?」
僕は聞いた。
「そうじゃな。というかお前、大砲については知ってるのか?」
そう聞くシルヴィアさん。
「詳しくはないですが、ベルクランドでは『爆石砲』というのが使われているとか」
僕は言った。
ベルクランドでは、爆発する石、いわゆる『爆石』というものが存在する。エリクサーの材料だ。しかしそれ以上に、ベルクランド王国の高い軍事力を支える恐るべき武器と聞いている。ドワーフたちは、最強の武器、大砲を使うのだ。
「せっかくの大砲なのに、驚いてくれないのは悲しいですね。フェイさん、可愛げが無いです」
そういうアーダちゃん。
「そう言われても……。ていうか、僕も大砲の製造方法なんて知らないけど。ていうか、爆石が無いと思うんだけど」
僕はそう言った。爆石が無いと、ベルクランドの大砲は撃てない。
「いくつか撃ち方はあるんじゃが、一番いいのは、『火薬』を使う方法じゃ」
そういうシルヴィアさん。
「火薬?」
僕は聞いた。
「昔、とある錬金術師が、薬を作ろうとしたら間違って作っちゃったらしいですよ」
そういうアーダちゃん。
「火薬の作り方は門外不出だが、お前がここで私の弟子として修業するなら、教えても良いぞ」
そういうシルヴィアさん。
「そうですか……。必要かもしれませんね。いずれにせよシルヴィアさんの技術にも興味はありますし、修行させてください」
僕は頼んだ。
「オーケーオーケー。まあたっぷり学んでいけ。錬金術師たるもの、切磋琢磨を欠かしてはいけないからな」
シルヴィアさんはそう言った。