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不遇の錬金術師  作者: 秀一
第四章 魔族の国 グランテイル帝国編
73/146

73話 青く輝く地下都市


 その日の夜。

 

 僕はもちろん寝ていた。眠かったし……。用意された部屋で寝ていたのだ。

 

 しかし突然、頬っぺたをツンツンされ起こされた。

 

「うーん……」

 眠い……。朝か……? いや、まだ暗いし眠い……。

 

「んー、あと5分……」

 そんな師匠みたいなことを言っていたら、くすりと笑われ、耳に息を吹きかけられた。

 

「うひゃあ!? な、何!?」

 びっくりして起きる僕。しー、と指を口に当てる少女。

 

「ごめんなさい。でも、どうしても今じゃないとダメなんです」

 そう言う少女。アーダちゃんだ。申し訳なさそうに片目をつむっている。

 

 僕は眠い目をこすり、起きた。しかし真夜中だろう。非常識にも程がある。

 

「一体何なの? 眠すぎるんだけど……」

 僕は文句を言った。

「すいません。コーヒーを持ってきました」

 そう言って暖かいコーヒーをくれるアーダちゃん。どうしても僕を起こすつもりらしい。仕方ないので、僕はコーヒーを飲んだ。

 

 さすがに目が覚めてくる。苦いし……。

 

 夜のグランテイルは、また違う雰囲気だ。しかし外は結構活動している魔族も多いようだ。夜に活動する種族も多いのだろう。空には星と月が輝き、幻想的だ。

 

 僕とアーダちゃんは外へ出た。そして不思議な洞窟に案内された。

 

「ここは?」

 僕は聞いた。

「地下遺跡です。危ないので、私についてきてくださいね……」

 そう言うアーダちゃん。

 

 そうして地下に入ると、そこはまた驚くべき場所だった。

 

 ふわり、と不思議な光がそこいらじゅうに輝いていて、しかもあたりはとても美しく、整理されている。見た事もない地面と壁。キラキラと青色に輝いていた。

 

「??? これは? まるで夢の中のようだ……」

 僕はそう言った。

「夢じゃないですよ。現実です」

 彼女はそう言った。

 

 それにしても、とても信じられない。どう考えても、アルパでもグランテイルでも絶対にありえないような風景だ。ここは一体何なのか?

 

 湖のような水道、貯水槽や、ゴーレムの死骸らしきものが倒れている。見た事もない機械らしきものも多い。

 

「これは……、古代遺跡か」

 僕はそう言った。

「察しが良いですね。その通りです」

 アーダちゃんは言った。

 

 この世界の古代文明は、今よりずっと文明が進んでいたらしい。とはいえ、太古の昔の事で、そういった過去の遺物は見ることができないものがほとんどだ。仮に出来たとしても、冒険者などに荒らされている場合が多い。

 

 しかしここはそうではないようだ。ここは魔族大陸、グランテイル。故に、遺跡も生き残ったということなのだろうか。

 

 それにしても、と僕は思った。

 

 古代遺跡については、僕も資料で読んだりしたことはある。その多くは古代エルフのもので、森の中にある場合が多かった。芸術的な意匠と華やかな街並みがきらめき、その中には魔法の髄を極めた究極の『魔剣』が鎮座している場合が多い。

 

 僕は古代エルフの文化については結構熟知している。とはいえ、この遺跡はそれとは似ても似つかない。芸術性の欠片もなく、ただ機能的に作られた街。そして頻出するゴーレム。

 

 これはエルフではない。となると……。

 

「ドワーフか」

 僕は言った。

 それを聞いて、アーダちゃんは振り返った。

「やりますね。その結論に達するなんて」

 感心した、と言う感じだ。試されていたのだろうか。

 

「でも相当古いね。現代のドワーフではないだろう」

 僕は言った。

「そうです。古代エルフと戦ったドワーフの都市。と言っても、もうずっと昔の話でしょうけどね」

 アーダちゃんはそう言った。

 

 いわば古代ドワーフか。

 

 ゴーレムに関しては、ベルクランド王国ではたまに使われているらしい。ただ、ゴーレムは作成が非常に難しい上に、あまり役に立たないので、現代ではほとんど使われていない。

 

 それは古代においてもそんなに変わらなかったはずだ。珍しい存在と言えるだろう。

 

「こちらです」

 彼女は案内する。地下都市の更に地下へ。

 

 こんな所に何があるというのか。全く意味が解らない。……とはいえ、彼女に悪意があるとも思えない。

 

「そういえば、君はドワーフなの?」

 僕は聞いてみた。

「そうですよ? 気付きませんでしたか」

 アーダちゃんは言った。

 

 確かにちょっと背は小さい……、でも、ドワーフの女性はあまり人間と変わらないからわかりにくい。それにアーダちゃんはちょっと肌が黒い。そう言うドワーフはダークドワーフと言われ、忌み嫌われている。彼女がどんな人生を送ってきたかは不明だが……、楽ではなかったかもしれない。

 

 僕達は光り輝く空間に来た。そこには豪華で大きいベッドが一つあって、銀髪の少女が寝ていた。

 

 この少女も見た事もない美しさだ。絶対普通の人間ではないだろう。何者だろうか。

 

「師匠! 来ましたよ師匠!」

 そう言うアーダちゃん。少女は眠そうに目をこすった。

「んー、あと5分……」

 そんなことを言う少女。何となく自分を思い出してしまった……。

 


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