72話 扇風機
夜には、文化祭が開かれた。
ゴブリンたちが吹奏楽をやってくれた。ゴブリンにそんなことができるのかとびっくりしたが、意外と頭が良く器用らしい。
料理もとても美味しかった。スパイシーな鶏肉や海老、魚が並んでいた。ドロテアもアドリアンさんも満足していたようだ。
そして舞台にはテレサちゃんとアーダちゃんが立った。
「それでは、これよりアーダちゃんの発明なのだー!」
叫ぶテレサちゃん。
「や、やります。てりゃー!」
何かの紐を引っ張るアーダちゃん。
するとブオオオオオオ! と涼しい風が吹いて来た。
この島は文句なしに暑い。だから涼しい風は嬉しい。
パチパチパチパチ……と拍手が巻き起こった。
アーダちゃんは後ろの装置を操作して風を止めた。僕は気になった。
「アーダちゃん、今のはどうやったの?」
僕はそう聞いた。
「風を吹かして涼しくしました! えへへ、凄いでしょ!」
自慢するアーダちゃん。
「確かに凄いね。どういう仕組みなの?」
僕は聞いた。
「んー、まあ大した仕組みではないですけどね。でも、誰も理解してはくれなかったんですけど……」
そう言うアーダちゃん。
「アーダちゃんは天才なのだ! よって誰も理解できないのだ!」
そういうテレサちゃん。
僕はその装置を見た。後ろに何かが入ってるようだ。
「これは?」
僕はその装置を調べてみる。するとかなり熱い。
「ああ、危ないですよ。これを燃やして、扇風機を回してますので」
そういうアーダちゃん。
「え? 燃やす? 回す?」
僕はちょっと混乱してきた。
「この島の水は燃えるので、それでこの装置から蒸気を発生させ、それで扇風機を回す仕組みなんですよ。わかります?」
そう聞くアーダちゃん。
「なるほど……。つまりは水車みたいなものか」
僕はそう言った。
「ああ、そうですね。分かるじゃないですか。まあ、この島には水車なんてありませんけど……」
そう言うアーダちゃん。やはり水不足なのか……。