70話 カレー
食堂はテーブルがたくさんある。魔王城とは思えないフランクさだ。
そのうちの一つの椅子に座った。テーブルの上には、ご飯の上に茶色いソースが乗った料理が置いてある。木のスプーンも横に置いてある。
「ありあわせですまんが、食べてくれ。美味いぞ」
そういう魔王様。
「これ食べられるの? 見た事無い料理だけど」
不安そうなドロテア。
「以前、領内に来たリザードマン商人が似たような料理を作ったことがあるな。スパイスがたくさんないと作れない料理だったはずだが」
アドリアンさんはそう言った。
「まあいただきますよ」
僕はそう言って食べた。
すぐにスパイスの芳醇な香りと、ピリリとした刺激が口の中に広がる。そして強い旨みを感じる。
「! 美味しいですね。これは初めてかもしれない……」
僕はそう言った。
「うむ、美味いな……」
そういうアドリアンさん。
「ほんとにい? まあ食べるけどさ……」
不安そうに食べるドロテア。しかしすぐに笑顔になった。
「おお! 本当に美味しいじゃん。良いね、これ。大陸の料理とは全然違うんだね」
ドロテアは喜んでそう言った。
「まあこれは、グランテイルというよりは七つ島の料理ですけどね。あのへんはスパイスが豊富に取れますので」
アーダちゃんはそう言った。
「おいしいのだー!」
テレサちゃんはガツガツと喜んで食べていた。
「一応、スパイスについてはこの城の中でも作っているのだ。原木を商人が中々売ってくれなかったもので苦労したがな……。まあ、我々は七つ島の商人にとってはお得意様だろうがな」
魔王様はそう言った。
「ちなみにこれは何と言う料理なのですか?」
僕はそう聞いた。
「正確な所はわからんが、カレーという料理らしいぞ」
魔王様はそう言った。