68話 二人の少女
グランテイルへと近づいていたのが功を奏し、僕達は何とかグランテイルへと辿り着いた。
僕が一番だった。こう見えても泳ぎは得意だ。僕の数少ない特技の一つである。まあ荷物はほとんど失ってしまったが、仕方ないだろう。命あっての物種だ。
「のあー、なんなのだー?」
そうすると、凄く馬鹿っぽい声が聞こえた。よく見ると、小さな女の子が居た。しかもその後ろで震えるもう一人の女の子も居る。二人とも普通の人間よりは小さく、見たこともない意匠の服を着ている。
「ふう……。僕はフェイ。君は?」
僕は水から上がり、そう聞いた。
「テレサなのだー。つよいのだー」
そんなことを言うテレサちゃん。白い短い髪をしている。瞳は金色に輝いている。
「あ、あの。私はアーダと言います。一体あなたは何者ですか?」
怯えるアーダちゃん。黒髪の長髪の少女、いかにも弱気そうだ。怯える黒い瞳。
「いや、怖がることは無いよ。魔王様の案内で来ただけだしさ」
僕はそう言った。
しばらくすると、ドロテア、アドリアンさん、そして魔王オスカルさんも泳ぎ着いた。それを見て、二人は安心する。
「ふう……。まったく、何でいきなり水泳大会をやらされるわけ?」
悪態をつくドロテア。
「まったくだな……。それにしてもドロテア殿、意外と泳ぎが上手ではないか」
そういうアドリアンさん。
「そりゃまあね。ていうか、フェイ君に負けるとは思わなかったけど」
そういうドロテア。
「テレサ、アーダ、ここに居たか。すまないが、何か体を拭くものをたくさんくれ」
そういう魔王様。
「わかったのだー」
テレサはそう言うと、突然凄い光を発した!
かと思えば、巨大な白い飛竜となり、城へと飛んでいった。
「あれはもしや、飛竜族!?」
叫ぶアドリアンさん。
「知ってるの?」
ドロテアが聞いた。
「見ての通り、飛竜に変身できる一族だ。というか、あちらが本来の姿なのだが」
アドリアンさんはそう言った。
「テレサは我が国でも最強の実力者でな。まあ少々考えが足りないところがあるが……」
そういう魔王様。
「魔王様。交流部隊は船で来る手筈だったと思いますが」
アーダちゃんがそう聞いた。
「トラブルがあってな。というか、まあいつもの海賊だが」
そういう魔王様。
「やはりですか。最近多いですね。アルパの連中みたいなんですが」
そういうアーダちゃん。
「アルパ王国の人が海賊を?」
僕は聞いた。
「そうだ。どうも連中は魔族には何をやっても良いと思ってるらしくてな。迷惑な話だ」
魔王様はそう言った。
「そうなんですか……」
まさかアルパ王国の仕業とは……。僕も一応、故郷ではあるんだけど……。