67話 海賊
船は風に乗り、北へ、北へと向かっていく。
グランテイルの大地が見える。もうグランテイルはすぐそこだ。
その時、怪しげな船が何隻か近づいて来た。そして火矢を放った。
「う、まずい!」
魔王様が叫んだ時にはもう遅かった。船中に火がついた。
「ヒャッハー! ぶち殺せ!」
叫びながら船に乗り込んでくる男たち。何者だ!?
「海賊だ! 出会え出会え!」
叫ぶ魔王様。海賊たちは容赦なく襲い掛かってくる。
「たあ!」
僕は氷柱石の槍を突き出した。しかし敵の動きは素早く、捉えきれない。
「素人が! 死ね!」
そう言って曲刀で斬りつける敵。だが僕は槍をぶん回し、弾き飛ばした。
「くっ、てめえ!」
たじろぐ敵。すぐさまアドリアンさんが襲い掛かり、敵を撫で切りにした。
「ぐあっ!」「ぎゃあ!」
ドロテアは魔術で、魔王様は拳で敵を叩きのめす。海賊たちは怖れを成し、逃げて行った。
しかし船に付いた火は消えるどころか、ますます燃え広がっている。船が傾き始めた。
「ちょっと! これはヤバくない?」
そう聞くドロテア。
「仕方あるまい……。悪いが皆のもの、水泳大会と行こう」
そんなことを言う魔王様。
船は沈没した。当然ながら全員参加の強制水泳大会と化した。僕達は泳いでグランテイルへと向かった。