63話 民会
イリスで民会が開かれた。
議長はルシールさんだ。様々な法案が決議され、了承されていく。と言ってもまあ、大したものはない。戦争直後には復興のための予算が組まれたりしたものだが、それらも終わり、今は平和だからだ。
しかしその日はちょっと様子が違った。変わった来客が居たのだ。と言うか、グランテイルの皇帝、オスカルさんが来た。
ざわざわ……と騒ぎになる。もちろん同盟国なので問題はないはずだが、相手が相手だから……。
「我らの友人、グランテイルの皇帝、オスカル殿です。その話を聞きましょう」
ルシールさんが言うと、あたりは静まり返った。
「諸君、今日は我々を迎えてくださり、感謝します。しかしながら、未だに我が国とファーランド国との間は誤解や不和がある」
オスカルさんはそう言った。
「今こそ、そう言った誤解を解き、両国の同盟と友好を確固たるものにしたい。そのために、交流会を開こうかと思います。議員の方も、是非参加していただきたい」
オスカルさんはそう言った。
話し合う議員たち……。
「交流会、ですか……、しかしうまくいくかしら」
不安そうなカンデさん。
「そうですね。昨日の今日ですし……」
僕もそう言った。
「交流会の開始は三日後。グランテイル各地を周っていただきます。参加される方は、ぜひ挙手していただきたい」
ルシールさんがそう言った。
「どうする? 面白そうだが……」
「しかしワシャ歳じゃからのお……」
「私も商売で忙しくて……」
そう言って躊躇する議員たち。
僕は考える。グランテイルか……。
エリクサーの材料はグランテイルにもある。『黒魔石』と言われるものだ。それも欲しいけど、ここでせっかくの交流会を無駄にするのもどうかと思う。どうすべきか……?
「……参加される者はおられませんかな?」
悲しそうにする魔王様。
「それならば、私が」
僕は手を挙げた。注目を集めた。
「おお、フェイ殿か。あなたならば適任だろう」
喜ぶオスカルさん。
「フェイ様が行かれるなら、私も是非!」
そう言って手を挙げるカンデさん。
「カンデ……。気を付けてな」
そう言うルシールさん。
「お二方でよろしいですかな。安全は確保いたしますが、護衛は10名までは認めます。3日後にお迎えに上がりますので、準備をお願いいたします」
オスカルさんはそう言った。