60話 いつか……
僕達はファーランド城へと帰還し、勝利を報告した。
人々は喜んだ。もちろん姫様もレフさんも喜んだ。バレンティナさんも。
僕達は既にジャムルでも宴会をしていたが、さらに盛大な戦勝パーティーが開かれた。
人々や軍勢だった人たちは、飲めや歌えや踊れやの大騒ぎだった。
「ふう……」
そんな喧騒を離れ、僕はファーランド城の裏手へと来ていた。ここは静かなので落ち着く。夜の海が見える。
「何してるの、英雄さん」
そう言ったのは、姫様だ。白いドレスを着てお洒落している。
「英雄だなんて。僕はただの人間だよ」
僕はそう言った。
姫様が横に座った。僕は驚いた。
「そうかもね。ただの人間で結構……」
そう言う姫様。海と空の星を見つめていた。
「姫様だって、この国を救ったじゃないですか」
僕はそう言った。
「ふふ、お世辞は良いのよ。ま、お互い思ったよりは活躍できたかもね。ただの人間だとしても」
そう言う姫様。
「これからどうするの?」
彼女は聞いた。
「ん、そうですね……。できたらまた、旅に出なければ」
僕は言った。
「エリクサーのため?」
そう聞く姫様。
「どうですかね。僕にも守りたいものができてきた……。色んな人に支えられて。自分の力も、少しはあるかもしれないけど、支えられてばかりだ。誰にも支えてもらえないより辛い事は無いけど」
僕はそう言った。
「私も無力だったしね。君と会えてよかった。私もできたら、あなたと旅をしたいものだけど」
そう言う姫様。
「それは……」
僕はそう言った。
「ふふ、冗談だよ。でもいつか、私を連れて行ってね、フェイ」
姫様はそう言った。