59話 緑風石
飲めや歌えやの騒ぎの時も、ちゃんと監視をしていた兵も居た。頭が下がる。
どうもこの街は城壁もなく、守備が甘い。臨時のバリケードをそこいらじゅうに作り、ひとまず最低限の防備を完成させた。
「お疲れ様です、フェイさん」
そう言うシルヴィオさん。
「いえいえ。とりあえず、そろそろファーランド城に引き返そうと思います」
僕はそう言った。もう戦争も終わりだ。兵士も解散しないといけない。
「本当にありがとうございました。ささやかな贈り物です」
そう言ってシルヴィオさんは、緑の金属の塊をくれた。
「これは?」
僕は聞いた。
「緑風石と言って、ここの名産品です。軽く、硬い。そして風を操ることができる魔法の石ですよ」
そう言うシルヴィオさん。
「そんなものが……。ありがとうございます」
僕は感謝した。
「まさか錬金術師に救われるとは思ってなかったですけどね。あなたは世界を救う英雄かもしれない」
シルヴィオさんはそう言った。
「いやいや。僕にそんな力はないですよ。ドロテアやセラさんの力が無いと、あの死神には勝てませんでしたし」
僕はそう言った。
「そうかもしれませんけどね。でもあなただって頑張ってくれたじゃないですか。その力を生かして生きて見てください。きっとあなたの力が、世を救う鍵になりますから」
そう言うシルヴィオさん。
「そうだよフェイ君。フェイ君がいないと、私もセラさんも死んでたよ。もっと自信を持てば良いと思うな」
そういうドロテア。
「そうだぞフェイ殿。謙虚さは美徳だが、仲間には不要さ」
セラさんはそう言った。
「わかった。僕も自信を持つよ。本当に役に立てるかはわからないけど……」
僕はそう言った。
「ふふ、まあ困ったらいつでも相談に来てよ。僕も商人としてはそれなりの財力があるからね。きっと役に立てるさ」
シルヴィオさんはそう言った。
そうして僕達はファーランド城へと引き返した。街道を通り、海辺の城へと向かう。