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不遇の錬金術師  作者: 秀一
第三章 海の国 ファーランド共和国編
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57話 死神


 僕は兵士たちに最大限の警戒をするように言って、ジャムルの街に待機させた。

 

 突撃部隊を編成する。僕、ドロテア、セラさんの三人にした。

 

「たった三人で? 大丈夫?」

 そう聞くシルヴィオ。

「そうだぞフェイ殿。私を頼りにしてほしいものだが」

 不満を言うアドリアンさん。

 

「本来ならばそうですが、いつ誰が操られるかわかりません。少人数で一気に決着を付けます」

 僕は言った。

「……危険極まりないで。せめてもう少し兵を連れて行ったらどうや?」

 そう聞くカンタンさん。

 

「いや、逆効果だろう。死霊の気配は鉱山に固まっている。もし大軍を率いて侵入すれば、大混乱が起きて壊滅は必至だ」

 そう言うセラさん。

「……だね。それにしても危険極まりないけど。私もできたら遠慮したいんだけど……」

 そう言うドロテア。

 

「そう言わないでくれ、ドロテア。神聖魔術が使える君が頼りなんだから」

 僕はそう言った。

「フェイ君は魔術の類は使えないわけ?」

 そう聞くドロテア。

「使えないよ。錬金術で聖水を作ることはできるけどね」

 僕はそう言った。

 

 僕は突入に際し、大量の聖水と石灰のチョークを生成した。

 

「聖水はわかるけど、石灰は何するわけ? まさか運動会じゃあるまいし」

 そういうドロテア。

「まさかね。魔法陣を書くためだよ。聖なる魔法陣、つまり聖印だけど、これを書いておけば死霊は入ってこれないはずだ」

 僕はそう言った。

「なるほど……。とはいえ、魔法陣は動かないぞ。敵地でそんなものを描いている暇はあるのかね」

 そう言うセラさん。

 

「とりあえず入口の封鎖ですね。とはいえ、死霊はおそらく壁を通り抜けるでしょうから、とにかく魔法陣を描きまくりながら突撃しようというわけです。敵の親玉を倒せば何とかなるでしょうが」

 僕はそう言った。

「やれやれ。いずれにせよ私かドロテア嬢が何とかしないといけないようだがな」

 セラさんはそう言った。

 

 魔法陣は錬金術の基本だ。様々な効果があるが、神聖な魔法陣、つまり聖印は、特に忌まわしい存在に対して効果が高い。

 

 僕はこれを入口に描いた。中を睨む。

 

「隊長、気をつけてくださいよ」

 シギスが忠告する。

「ああ。もし僕達が帰ってこなかったら、ファーランド城まで退却するように」

 僕は言った。

「……隊長。どうかご無事で」

 シギスはそう言った。

 

 僕はひとまず聖水を3人に振りかけた。そうして突撃する。

 

 すぐさま、死霊たちが襲い掛かってきた。敵の力が強いのか、見える。

「はっ!」

 セラさんが剣を振る。華麗な一撃が決まり、死霊たちは四散していく。

 

 敵は次から次へと襲い掛かってくるが、セラさんは当然のように切りさばいていく。敵も複雑な動きをして攻撃してくるのだが、セラさんはそれらに合わせ、敵を切り刻む。

 

 あっという間に死霊たちは壊滅していった。

 

「なーんだ。どうってことはなかったわね」

 そう言うドロテア。

「……油断するな。大物が居る……」

 セラさんはそう言った。

 

 果たして大物が現れた。巨大な漆黒の鎌を持つ巨大な死神。ふわりと空を飛び、襲い掛かってくる。速い!

「はあ!」

 キン! と鎌と剣がぶつかった。ガキン、キン! と火花が散る。

 

 死神はふわりと舞うと、高速でこちらに向かってくる!

 

「! ドロテア!」

 僕は叫んだ。

「光の精霊よ!」

 ドロテアが叫んだ。

 

 浄化の力がドロテアから放たれる。しかし敵はそれをかわし、こちらに斬りつけて来た。ズシャア! と右腕を切り裂かれるドロテア。

「うあああああ!」

 血を流し、苦しむドロテア。敵の攻撃が速すぎて、防ぐことはできなかった。

「くそ!」

 僕は何とか魔法陣を描く。しかし後方から敵が襲ってくる!

「危ない!」

 セラさんが叫ぶ。僕は敵の鎌をハンマーで何とか防いだ。

 

 悠々と空に舞う死神。僕は魔法陣を完成させた。光が放たれ、僕とドロテアが守られる。

 

「ううう……」

 痛みに苦しむドロテア。僕はひとまず止血し、消毒した。

「うああ!」

 更に痛みに苦しむドロテア。しかしまあそれは仕方ない。包帯を巻いて、応急処置した。

 

 ガキン! キン! と剣と鎌がぶつかる。死神とセラさんは互角のようだ。

 

「どうしたものか……」

 僕はつぶやく。

「くっ……、フェイ君。私を、敵の近くへ……」

 そういうドロテア。

「……さすがにそれは、危険だと思うけど」

 僕は言った。

「このままでは、駄目でしょう。接近し、私の魔術をぶつけるよりほかはない」

 そういうドロテア。

 

 セラさんは押され始めた。徐々にこちらに押される。

 

「ぐっ……、すまない。これほどの使い手とは……!」

 セラさんは剣を巧みに動かし防ぐ。鎌の凄まじい猛攻が襲い掛かる。

 

 セラさんは結局、魔法陣の中に退避した。だが敵の攻撃は続き、魔法陣がガシャン! と音を立て悲鳴を上げる。

 

「好都合だね。光の精霊よ!」

 ドロテアが聖なる浄化魔法を唱えた。だが死神はすんでのところで退避してしまう。

 

「うそ! くう、こんな……」

 狼狽するドロテア。

「……」

 セラさんが剣を構える。

 

「ドロテア、魔力薬を」

 僕は魔力薬を渡した。

「ありがと……。でも、これで最後?」

 そう聞くドロテア。

「そうだね。もう余裕はないよ」

 僕は言った。ドロテアは薬を飲んだ。

 

「どうしたものか……」

 セラさんは悩む。

 

 敵は悠々と空を舞い、満を持して高速で襲い掛かってくる。ガシャーン、と音を立て、魔法陣は破壊された。

 

「ここまでか……!」

 叫ぶセラさん。

「私の魔法が当たれば……!」

 そういうドロテア。

 

 僕は荷物から綱を取り出した。馬に乗るためのやつだが、これにも聖水をかけておいた。

「とりゃあ!」

 僕は綱を投げ、死神を捕まえる。先の輪っかが締まり、見事に捕まえた。

「!?!? ウググ……!」

 睨む死神。振りほどこうとするが、離すつもりは無い。

「! もらった! 光の精霊よ!」

 ドロテアの魔術が決まる。死神は浄化され、消滅していった。

 


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