表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不遇の錬金術師  作者: 秀一
第三章 海の国 ファーランド共和国編
56/146

56話 ジャムルの亡霊


 僕は軍勢を編成した。

 

 姫様は新たに300人の兵士を連れて来た。元々居た兵が300。更に、ファーランドの軍が100と、七つ島の傭兵が加わり、総勢750人ほどの大軍になった。国同士が本気で争うならもっと大軍になることもあるかもしれないが、まあ今回の戦いでは常識はずれなほどの軍勢だろう。

 

 七つ島の傭兵はリザードマンだ。基本的に七つ島にはリザードマンしかほとんど住んでいないらしい。この島々の周辺は波が荒く、船で近づくのは難しいため、泳ぎの達者なリザードマンでないと危険なのだ。

 

 僕達はそのまま、ジャムルへと向かう。ジャムルはファーランド南方の地方都市で、港もあるがそことは少し離れた山の中にあり、地の精霊、ノームたちの住処となっている。

 

 僕達は街道を通り、ジャムルへと直行した。ファーランド本城からはそんなに距離は無い。

 

 ジャムルは洞窟都市と言う感じだ。ノームたちが迎えてくれた。

 

「やあどうも、よく来てくれたね!」

 ノームたちのリーダーはシルヴィオさん。以前、コーネリアとファーランドの和平の時にも居たノームだ。小人と言う感じで、背はかなり小さい。可愛らしい生き物ではあるが、男だろう。

 

「どうも、シルヴィオさん」

 僕はそう答えた。

 

 しかしちょっとおかしい。ここには敵が居るはずだが……。

 

「シルヴィオさん。敵はどこに?」

 僕は辺りを見回しながら聞いた。

「ああ、そうなんだよね。まあひとまず、入りなよ」

 そう言って洞窟に案内するシルヴィオさん。

 

 僕はシギスに軍を任せ、洞窟内に入った。セラさん、アドリアンさん、ドロテア、カンタンさんが続く。

 

「よく来てくれたね。本当なら何かおもてなしでもするつもりだったんだけど、すまないね」

 そう言うシルヴィオさん。

「それは構いませんが、どうなってるんです? 敵は居ないようですが」

 僕は言った。

 

「んー、それは難しいところなんだよね。なんて言うかさ、居ると言えば居るし、居ないと言えば居ないって感じかな」

 曖昧な事を言うシルヴィオさん。

 

「何それ? 意味不明なんだけど」

 そう言うドロテア。

「確かに。そのような物言いは感心できんな」

 そういうアドリアンさん。

 

「……」

 一方、セラさんは黙っていた。何かを考えているようだが……。

 

「それにしても、せっかくこれだけの軍勢を揃えて来たのに何か無駄になりそうやんか。どないするんやシルヴィオはん?」

 そう聞くカンタン。

「結論を急ぐのは商人の悪い癖だよ。まあ僕も商人だけどさ……」

 シルヴィオがそう言った時!

「ぎゃあああああああああああああああ!」

 叫び声が聞こえた。

 

 何事か、と外に出ると、兵士たちが争っていた。コーネリア兵がコーネリア兵に襲い掛かっている。

「テメエ! 何をするか!」

 シギスが兵士を切り裂いた。

「ぐああああああああ……」

 そのまま兵士は断末魔を上げ、死んだ。

 

「どうした?」

 僕は聞いた。

「隊長! 反乱です!」

 叫ぶシギス。

「反乱!?」

 混乱する僕。

 

「反乱!? マジかよ!?」

「何だって!?」

「どうなってるんだ……!?」

 混乱する兵士たち。

 

「落ち着け。これは反乱などではない」

 セラさんがそう言った。

「しかし剣聖さん。明らかにコーネリア兵がコーネリア兵に襲い掛かってきましたぜ」

 そう言うシギス。

「これは敵の攻撃だ。そうだな? シルヴィオ」

 セラさんがそう言った。

 

「そう言う事なんだ。あいつらは鉱山をねぐらにしているみたいだけど、時々僕らを操って殺し合わせるみたいだ。危険極まりないから、多くのノームは他の所に退避させているんだけど、僕達はここを離れるわけにもいかなくてね……。ただ、このままだと僕らも全滅してしまう。何とかしたいけど、どうすればいいのか、わからない」

 シルヴィオはそう言った。

「敵は一体どんな奴らなんですかい?」

 シギスは聞いた。

「……禍々しい奴らだ。まあ、死霊と言うのが正しいか……」

 セラさんはそう言った。

 

「元々からして、死霊と戦ってるわけだしね。こういう戦術を取ってくることも考えるべきだったか……」

 僕はそう言った。

「しかし、どうするの? 相手は見えないみたいだし、これじゃあいくら兵士が居ても役に立たないよ」

 そう言うドロテア。確かに、こんな相手では大軍は無意味だ。

 

 僕は神聖魔術の本を読む。聖水の作り方の他、防衛のための魔法陣の書き方なんかが載っている。

 

「ドロテアは神聖魔術は使えないの?」

 僕は聞いた。

「使えなくはないよ。得意じゃないけどね」

 そういうドロテア。

 

「セラさんは敵の姿が見えるんですか?」

 僕はそう聞いた。

「面白い質問だな。まあ、感じることはできるよ」

 そう言うセラさん。

 

「鉱山に突撃し、敵の親玉を浄化、もしくは封印するしかないでしょうね」

 僕はそう言った。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ