54話 魚醤のスパゲッティ
翌朝。からっと晴れた。
ハイランドの城壁の修復も完了し、僕達は心置きなく出立した。山を下り、まずはイリスを目指す。
騎兵隊が周囲を警戒しながら進む。とはいえ、もう敵はおそらくいないだろう。
何事もなく僕達はイリスへと辿り着いた。城内へと入る。
「みんな、ここで少し休んで行こう。昼食をとってほしい。日が傾く頃には出立し、ファーランドへと帰還するぞ」
僕はそう言った。
僕達はまた、中央の屋敷に戻った。
「お帰り、カンデ。……お前らもまた来やがったのか」
そんな風に言うドワーフ。まあ、そんなに嫌われているわけでも無いようだ。
「ただいま、お父様。皆様に昼食を出してくださいませんか?」
そういうカンデさん。
「ドワーフの飯で良かったら、そこにあるがね」
そういうドワーフ。
見ると、麺が置かれていた。無造作に置かれているようだが、茶色いソースがかかっているようだ。良いにおいがする。
僕は皿に取り、フォークで食べてみた。美味しい!
「これは美味しいですね。潮風の味、魚醤ですか」
僕はそう言った。
「ふうん、わかるのか。ま、このあたりじゃ良くある飯だがね」
ドワーフはそう言った。
アドリアンさんとドロテア、セラさんも食べた。
「ほう、これは何とも美味な……」
「凄く美味しいじゃん! なにこれ!」
「ふむ……、良い味だ……」
三人共喜んでいるようだ。
ドワーフが近づいてきて、セラさんに声をかけた。
「剣聖様、ご無事でしたか」
ドワーフはそう言った。
「うむ。ルシール殿、助けに来てくだされば良かったのに」
皮肉を言うセラさん。
「申し訳ありませんな。敵の狙いが分からない以上、ここを手薄にはできませんので……」
そういうドワーフ。ルシールと言う名前のようだ。
「変わらんな、君は」
セラさんはそう言った。少し微笑んでいるようだ。
カンデさんはいつの間にかいなくなっていた。またサロンに戻ったのだろうか……。