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不遇の錬金術師  作者: 秀一
第三章 海の国 ファーランド共和国編
50/146

50話 巨大なゾンビ


 その次の日、いよいよ僕達はハイランドへ向け出発した!

 

 ……酒を飲むことを禁止していなかったので、イリス名産のワインを飲んで二日酔いになっている兵士も居たが、まあ仕方ない。そういうこともあるだろう。

 

 ハイランドは、ファーランド北西部の山の中にある。険しい山の頂上のような場所にエルフたちが住んでいる。

 

 僕達は山岳地帯に差し掛かった。周囲を警戒しながら進む。

 

 川があった。その先に大量の怪物が居た。紫色のドロドロのゾンビたちだ。

 

「どうします? 隊長」

 そう聞くシギス。

「悩むことはないだろう。弓矢で攻撃!」

 僕は命じた。

 

 バババ。と矢が放たれる。ゾンビたちに突き刺さる。グチャ……と潰れて行くゾンビたち。

 

「気持ち悪いですわ……。しかし、どういう原理で動いているのでしょうか?」

 そう聞くカンデさん。

「黒魔術の類だね。多分、リーダーとなる存在が居るはずだよ」

 ドロテアは言った。

 

「僕は黒魔術には全く疎いけど、ドロテアは知ってるの?」

 僕はそう聞いた。

「無知は感心しないけどね。生きてる人を犠牲にすることもある黒魔術は、最も忌むべき魔術だから、あまり学べないだろうけどね……。私も学ぶ気は無いよ」

 そういうドロテア。

「忌まわしい事だ。このような魔術、排除すべきだ」

 そういうアドリアンさん。

 

 僕達は前進する。ゾンビたちを射撃し、倒していく。矢が命中すれば倒れるのだから、大した相手ではない。

 

 ほとんどのゾンビを排除し、ハイランドの城壁が見えてきた。無事だろうか?

 

「おーい!」

 僕は叫んだ。

「救援か?」

 城壁の上から、エルフの男が弓矢を構え、見ていた。

 

「コーネリアからの救援やで。セラ様は?」

 そう聞くカンタンさん。

「今敵の親玉と戦っておられる。救援を!」

 そう言って、門が開かれた。

 

 門の中に入ると、多くの建物が破壊され、エルフが何人か犠牲になっていた。その中央で、巨大な紫色の怪物と、一人のエルフが戦っていた。

 剣を構え、切り裂くエルフ。しかし怪物はものともしない。

 

「あー、うー……」

 そんな声を出す怪物。巨大なゾンビのようだ。

「……」

 エルフは何も話さず、ただゾンビを切り裂く。

 

 その剣は華麗で、美しかった。無駄のない動きでゾンビを切り裂く。しかしゾンビはドロドロと溶け、その威容をぶつけに行く。

「ちっ……」

 エルフはひょい、とかわし、後方に降り立った。周りに手をかざし、あたりの気配を探る。目が見えていないようだ。

 

「エルフ様、助太刀を!」

 僕は叫んだ。弓矢部隊に命じる。

「放て!」

 バババ、と矢が放たれ、突き刺さる。しかしそれでもゾンビにはあまり効いていなかった。

「あー、うー……」

 変な表情であたりをうかがうゾンビ。攻撃が効いているようには思えない……。

 恐ろしい巨大さだ。10メートル以上はある。こんなのと戦うとは……。

 

「下がれ! 私が何とかする」

 そういうエルフの剣士。しかし任せるわけにはいかない……。

 

「あのゾンビには根幹となる部分があるはず……。しかし、あれだけ巨大だとどこが核かわからない……」

 ドロテアはそう言った。

 

 僕は気を静め、敵の気配を探る。禍々しい中心点が見える。

 

「見つけた……、しかし敵は巨大だし、あのドロドロは邪魔だ。どうしたものか」

 僕は言った。

「何か有効な手段があるの?」

 ドロテアは聞いた。

「聖水を持ってきた。これを中心点にぶつければ、倒せるはずだ」

 僕は聖水を取り出した。3つある。

 

「そういうことなら、何とかしてみよう」

 アドリアンさんが突撃する。

「私もお役に立ちますわ!」

 カンデさんも突撃した。槍を構える。

 

 兵士たちも参戦し、剣で攻撃する。敵をズタズタにして行くが、敵は気にも留めず、その巨大な拳で殴りかかる。

「ぐわ!」

「うぐ!」

「うああ!」

 凄まじい攻撃に吹っ飛ばされる兵士たち。毒に侵され、苦しんでいる。

 

「くっ……、何とかならないか……!」

 焦るエルフの剣士。

「みんな、離れて!」

 ドロテアが叫んだ。

 

 兵士たちとアドリアンさん、カンデさん、そしてエルフの剣士が離れる。

 

「大地の精霊よ!」

 ドロテアは叫んだ。

 

 ドロドロの泥がドロドロのゾンビに襲い掛かった。ゾンビは気にも留めないが、泥が混ざり、体が硬くなっていく。

 

「風の精霊よ!」

 ドロテアが風を巻き起こす。ゾンビは外殻を吹き飛ばされ、中央にある禍々しい魂が露わになった。

 

「よし! 食らえ!」

 僕は聖水を全てぶん投げた。瓶入りの聖水が飛んでいく。その中に、魔力薬の瓶を混ぜた。魔力薬は、衝撃を受けると爆発する。

 

 敵にぶつかると、大爆発が起こり、大量の聖水がぶっかけられた。

 

「グアアアアアアアアアアアア!」

 ジュウー、と焼けるような音がして、魂が傷ついていく。そして浄化され、消滅した。

 


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