49話 剣聖
ヴァイオリンやフルートを演奏する人も居て、とても華やかな感じになった。
聞いたことも無い音楽が色々と流れる。
演奏が終わったので、僕達は拍手した。音楽家の人たちは頭を下げた。
「カンデさんは、音楽が好きなのですか?」
僕は聞いた。
「ええ。まあ、芸術は何でも好きですけどね。それにしても、フェイ様がうらやましいですわ」
そういうカンデさん。
「と、言いますと?」
僕は聞いた。
「だって、色んな所を旅されているのでしょう? 私も世界中を見て回りたいですわ。そうだ、フェイ様。私も連れて行っていただけませんか?」
そんなことを言うカンデさん。
「いやいや。これから僕達は戦争に行くわけですし、危ないですよ。そもそも、あの父親が心配するのでは?」
そう聞く僕。
「お父様は私の事など心配しませんわ。むしろ、屋敷に閉じこもっていた方が心配します。というわけで、良いですよね、フェイ様!」
無茶を言うカンデさん。
「いや、僕は別に良いですけど……。アドリアンさんはどう思います?」
アドリアンさんに助けを求める僕。
「女子がそんな良く解らない理由でついてくるのはどうかと思うがな……」
渋い顔をするアドリアンさん。
「あたしは別にどうでも良いけどね」
どうでも良さそうなドロテア。
「カンデお嬢様が居れば色々役に立つとは思いますがね。ただ、自分の身は自分で守らねばなりませんぞ」
そう言うカンタンさん。
「もちろんですわ。こう見えても、槍術には自信があります。問題ありませんわ」
そういうカンデさん。
「そうですか。まあ、僕も槍術なら多少は使えますが……。そういうことなら、僕としては断る理由はありませんけど」
僕はそう言った。
「ハイランドに行かれるのですよね? あそこの『剣聖』様には何度かお会いしたことがありますから、私が居ればお役に立てるかと」
そういうカンデさん。
「『剣聖』だと!?」
叫ぶアドリアンさん。
驚くカンデさん。
「まあ、大きな声。どうされたのですか?」
そう聞くカンデさん。
「この世に剣聖と言われるのはただ一人。盲目の古代エルフ、セラ様のみと聞くが……」
そう言うアドリアンさん。
「あら、ご存知でしたか。セラ様は昔から、ハイランドに住んでおられますわ」
そう言うカンデさん。
「そうだったのか……。まさか、こんな所に……」
そう言うアドリアンさん。
「アドリアンさん、知ってるの?」
そう聞くドロテア。
「もちろんだ。伝説的な存在で、まだ生きておられるとは思わなかったが……」
興奮するアドリアンさん。
「そんな凄い人が居るんですか。それなのにハイランドは危険な状態にあるのですか?」
僕は聞いた。
「あの国は元々エルフの国で、人口が少ないですからね。多勢に無勢、危険な状態にあると聞いていますわ」
そういうカンデさん。
「助けに行かねばならんな、フェイ殿」
やる気満々になったアドリアンさん。
「そうですね……」
僕はそう言った。