48話 ピザとトマト
カンデのサロンと言うのは、この屋敷とは別の場所にあるようだ。
サロンか……。貴族でもなければ、近寄ることもあり得ないと思っていたけど。
「旦那、気を付けてや。カンデお嬢様も、何というか、変わった人やしな」
そう忠告するカンタンさん。
「そうですか。でも気を付けてと言われてもねえ……」
小声で話す僕。
イリスの街は大きい。それに見たことも無いような絨毯やスパイス、食べ物屋にあふれていて、何とも楽しい感じだ。
「お、ピザが売ってるよ!」
叫ぶドロテア。
「らっしゃい。ピザはいかが?」
そう聞くピザ屋のおっちゃん。
「買って買って買って!」
駄々っ子と化したドロテア。
「わ、わかったよ。落ち着いて」
仕方ないので買う僕。
「毎度あり。銅貨5枚だよ」
そういう店主。
割と大きめのピザを買ってしまった。チーズと後、赤いソースがかかっている。それに緑のソースも。
「ここのピザは美味しいですよ。フェイ様はピザを食べた事は?」
そう聞くカンデさん。
「ありませんよ。僕はアルパ生まれなもんで」
そう言う僕。
「まあ、そうなのですか? コーネリアの将軍様と聞きましたが」
そういうカンデさん。
「成り行きで今はそんな感じですね」
僕はそう言って、ピザを食べた。
美味しい。これは美味しい。チーズの旨みと、赤と緑のソースのさっぱりした味があう。
「美味しいですね。これは美味しい! こんなものがあるとは……」
驚く僕。
「確かに、良い味ですな」
アドリアンさんも感心しているようだ。
「でしょ! 私の目に狂いはなかったね」
何か自慢するドロテア。
「それにしても、そちらのお二方は龍人様とダークエルフ様ですか。珍しい方々ですね」
そういうカンデさん。
「確かに、あまり人間やダークエルフと仲良くしたりはしないからな」
そういうアドリアンさん。
「ま、私はそういう固い事は気にしないけどね」
ドロテアはそう言った。
「それにしても、このチーズはともかく、赤いソースと緑のソースは?」
僕は聞いた。
「トマトとバジルですわ。ご存じない?」
そう聞くカンデさん。
「バジルについては知ってますが、トマトというのは知らないですね」
僕は言った。
「確か、最近南方で発見された野菜ですからね。この辺に植えると何故か赤くなったとか。最近のファーランドではどこでも作られ、食べられてますわ」
そういうカンデさん。
色々新しい物があるんだな、と思い、僕達はカンデさんのサロンとやらに入った。
そこには、不思議な(と言うか変な)絵が飾られていた。そして不思議な楽器が不思議な音楽を流している。
もちろんそれを実際に使って音を出している人も居る。みんな人間のようだ。
「おや、カンデ様。どうされましたか」
そう聞く楽器を鳴らしてた人。見た事のない楽器だ。10本指で棒のようなものを押しているようだ。
「こちら、錬金術師のフェイ様ですわ。ぜひ皆様と会っていただきたいと思いまして」
そういうカンデさん。
「ほほう、錬金術師殿ですか。ぜひとも私の音楽を聴いていただきたいですな」
そういってその楽器を弾く音楽家の人。チャン、チャン、と独特の悲しげな音だ。しかし、気品はある気もする。
「興味深い楽器ですね。これは何と言うんです?」
僕は聞いた。
「チェンバロですわ。最新の楽器ですわよ」
そういうカンデさん。




