41話 死霊王(前編)
僕は眼下に敵を見据え、作戦を考える。突撃も一つの手だが、危険だろう。どうするか……。
「フェイ殿。悩むことなどない。突撃を」
そういうアドリアンさん。
「いやいや。危険でしょ。弓矢を撃てば良いんじゃないの?」
そういうドロテア。
確かに、この位置からなら弓矢を当てる事ができそうだ。それが良いか。
「シギス。弓矢を撃とう。各自に命令を」
僕は言った。
「了解。弓矢構え!」
叫ぶシギス。騎兵隊と歩兵隊が弓矢を構えた。
「撃て!」
僕は命じた。
ババババ、ヒュンヒュン! と矢が雨のように降っていく。
死霊兵は、数は多いが、意志を持たず動きは遅い。敵に面白いように命中していく。バタバタと倒れる敵。
「むう……、弓矢など男らしくないが、やはり恐るべき威力だな」
そういうアドリアンさん。
「男らしさなんてどうでもいいじゃん。勝てば良いんだよ」
そう言うドロテア。まあそうかもしれない。
死霊兵は壊滅し、城への道が開かれた。すぐさま、僕達は近づいていく。
だが、敵の船から一人の骸骨が降りてきた。マントを着ている。
「クカカカカ、小癪な連中よ」
奇怪な笑い声をあげる骸骨。兵士たちが弓矢で射撃するが、不思議なバリアに跳ね返された。通じないようだ。
「何者だ!」
僕は言った。
「我は死霊王ン・ティスなり。生者共に死をプレゼントしてやろう」
そう言ってン・ティスは忌まわしい魔術を唱えた。
カタカタカタ……と骸骨兵やゾンビ、ゴーストが現れる。いや、復活したのか?
「こりゃまずいね。凄い魔術師だよ」
そう言うドロテア。
「ふん。このぐらいではないと手ごたえがないわ」
そういうアドリアンさん。
そこらじゅうで戦いが始まった。騎兵や歩兵が、敵を倒していく。だが、敵はひたすら増えていく。
「クカカカカ。死ぬがよい、愚かな生者共」
笑うン・ティス。
「このままでは駄目だ! 隊長! どうします!?」
叫ぶシギス。
「あの死霊王さえ倒せば!」
僕は言った。
「よーし、じゃあちょっと手品といこうか! 種も仕掛けも無いけどね!」
そういうドロテア。魔術を唱え始めた。
「……? ダークエルフか」
死霊王は少し興味を持ったようだが。
「水の精霊よ! その力を貸せ!」
ドロテアの魔術が完成する。そして……。
ざばあああああああああああああ!
凄まじい津波が押し寄せ、敵の船を次々と飲み込んでいく。そして津波はこちらにも来た。
ざばああああああああああああああああああん!
「うわああああああ!」
「ぎゃああああああああ!」
「ひええええええええ!」
こうして僕達は全員、津波に飲み込まれた。