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不遇の錬金術師  作者: 秀一
第二章 湖の国 コーネリア王国編
35/146

35話 仲間と信頼


 僕はその日、朝早く起きた。

 

 店の裏手では、食料になりそうなものを育てている。アルパから持ってきた大豆は、育ってはいるのだが、太陽が当たらないところのものはもやしになっている。

 

 見ると、アドリアンさんが剣の素振りをしていた。

 

「おはようございます。アドリアンさん」

 僕はそう言った。

「おはよう、フェイ殿」

 アドリアンさんはそう言った。

 

 アドリアンさんの剣筋は見事だ。アルパやコーネリアのものとも少し違うようだ。剣も少し湾曲していて、コーネリアのものとは違う。

 

「珍しい剣ですね。それに珍しい剣術だ」

 僕は言った。

「わかるか。さすがだな」

 アドリアンさんはそう言って剣を振るった。庭にあった藁木が切り刻まれた。

 

「その剣もコーネリアのものとは少し違うみたいですね。見せていただいても良いですか?」

 僕は聞いた。

「良かろう。見たまえ」

 そういうアドリアンさん。

 

 その剣は驚くほど特徴的だった。切れ味を重視した剣のようだ。素材はもちろん金属だが、鉄ではないようだ。

 

「竜牙剣とか言われるな。作り方は知らんぞ」

 そういうアドリアンさん。

「そうですか。ありがとうございます」

 僕は剣を返した。簡単に作れるものでは無いだろう。

 

「フェイ殿は剣に興味があるのか?」

 そう聞くアドリアンさん。

「まあ剣と言うか、武器全般にね。ものを作るのが錬金術師の役割ですから」

 僕はそう言った。

 

「錬金術師か……。しかし何故そんなものに? フェイ殿なら、将軍として身を立てれば良いではないか」

 そういうアドリアンさん。

 

「まあそうかもしれませんが、僕は争い事が好きではないですし、ものを作るのは好きなんですよ。武器よりも、料理とかね。色んな人が喜んでくれるのが何よりの幸せなんです」

 僕はそう言った。

「……なるほど。甘いが、優しいな」

 そういうアドリアンさん。

 

「やっほー! 元気してた? フェイ!」

 突然、女の子が声をかけてきた。浅黒い肌のドロテアだ。髪型がポニーテールになっている。

 

「ドロテア、どうしたの?」

 僕は聞いた。

「国に小麦とか米を届けてたんだよ。みんな喜んでたよ」

 そういうドロテアちゃん。

「そうか、そりゃ良かった」

 何よりだ。

 

「それでさあ。良かったら、私を部下にしてよ」

 そういうドロテア。

「部下? そりゃまたどうして?」

 僕は聞いた。

「いや、そう言う約束だったしさ。まあ姫様に仕えるのでもいいんだけど、今更あの城に行くのも面倒だし怖いしさ。フェイ君なら大丈夫かなと思って」

 そういうドロテアちゃん。

 

「良いではないか、フェイ殿。ちなみにこのドロテア嬢は名の通った魔術師だぞ」

 そういうアドリアンさん。そうなのか?

 

「魔術師だったの? じゃあその気になれば魔法を使って暴れることもできたのか」

 僕は言った。

「まあね。もっとも、あなたたちがどんな連中か見極めたかったし、そんなことはしなかったけどね」

 そう言うドロテア。意外と抜け目ないんだな……。

 

「まあそういうことなら歓迎するよ。ちなみにどんな魔法が使えるの?」

 僕はそう聞いた。

「んー、まあ大体の魔法は使えるよ」

 そういうドロテア。

「そりゃ凄いな。実は天才なんじゃ?」

 僕はそう言った。

 

「ふふ、まあね。でもさ、魔力がすぐになくなっちゃうから、あんまり乱用はできないけどね」

 そう言うドロテア。

「そっか。でもそれなら、僕の魔力ポーションが役に立つかもね」

 僕は赤い薬を取り出した。

「へえ、そんなのあるの? いっぱいある?」

 聞くドロテア。

「今は3つあるね。でもこれは素材が難しくて、ここではちょっと作れないかな」

 僕はそう言った。魔力薬の類はアルパの素材で無いと難しい。

「凄いね! んじゃ一つ頂戴よ」

 そう言うドロテア。

「いいよ、はい」

 僕は渡した。

 

「……私が言うのも何だけどさ。フェイ君って甘いよね。私がフェイ君に魔法を撃ったりしたらどうするの?」

 そう聞くドロテア。

「まあそれは困るね。死ぬかもしれないし。でも僕は、君を信じたいんだ」

 僕は言った。

「どうして?」

 ドロテアは聞いた。

「僕は結構、人に裏切られたり、傷つけられたりしてきたけどね。だからこそ、信頼できる人とか、仲間が欲しいんだよ。そのためにまずは信じたいんだ。そうでないと、何も始まらないからね」

 僕は言った。

 

「そっか……。君も苦労してきたんだね。心配しないで。私はあなたを裏切ったりしないから」

 ドロテアは言った。

「ありがとう、ドロテア」

 僕は感謝した。

 



 

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