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不遇の錬金術師  作者: 秀一
第二章 湖の国 コーネリア王国編
34/146

34話 戦後処理


 戦いは一応、終わった。

 

 敵の援軍が襲ってくる可能性はあるが、まあそんなことまで考えても仕方ないだろう。城塞は修復され、コーネリアの国境線は平常通りに戻った。

 

 ダークエルフがファーランド領を通って侵入してきた件については、ファーランドは寝耳に水だったらしい。ファーランド側のミスという事で、その地域はファーランドが新たに城塞を作って押さえることで話が付いた。

 

 そして、戦後の処遇。

 

 玉座の間には、浅黒い肌のダークエルフの少女、ドロテアと、茶色い龍人族の伯爵、アドリアンが並べられた。二人とも拘束はされていないが、武器はないし屈強な兵士たちが周囲を固めている。逃げたり暴れたりすることはできないだろう。

 

「……さて、お待たせして申し訳ございません。ひとまず、何故我が国に攻撃してきたのかを聞きましょうか」

 姫様が口火を切った。

 

「何故だと!? お前たちが私達の仲間を殺したからに決まっているだろう!」

 怒るドロテア。

「左様。むしろ何故こちらを攻撃してきたのか聞きたい」

 アドリアンは厳かにそう言った。

 

「その件に関しては本当に申し訳ないですね。ただだからと言って、コーネリアを侵略したら同じことだと思うんですが……」

 そういう姫様。

「ふん! 目には目を、歯には歯をということだよ!」

 悪びれないドロテア。

「……」

 黙るアドリアン。

 

「姫様、そんなことを言っても無意味です。これからのことを話しあわなければ」

 僕は言った。

「そうですね。では、あなたたちの処遇を言い渡します」

 姫様が言った。

「!」「……」

 緊張する二人。

 

「まずドロテアさん。今回の事は私達の非を認めます。賠償を致しますので、現在、エルティアに必要なものを言ってくださいますか」

 そういう姫様。

「!? 賠償……?」

 混乱するドロテア。

 

「詭弁だな。金でどうなる話ではないだろう」

 そういうアドリアン伯。

「しかし争いは何も生みません。アドリアン伯爵、あなたはどうすれば私達が戦いを止めることができると思いますか?」

 姫様はそう聞いた。

 

「……私は家族に追い出されるようにここに来た。自らの領土が欲しかったんだ。結局、お前たちを利用したというわけだな。まあ、こうしてここで死ぬことができるなら、自業自得というものだろう」

 アドリアン伯爵はそう言った。

 

「そういうことだったんですか。龍人族も一枚岩ではないのですね」

 僕はそう言った。

「まあな。……こうして一応将として扱ってくれるお前たちの方が、私の家族よりはまともかもしれんな」

 そういう伯爵。

 

「……私も国じゃあロクな目には合ってなかったけどね。結局みんな自分勝手なんだよ。苦労するのは、私達みたいな弱い存在さ」

 そういうドロテア。

 

「みんな不遇だったという事なんだね。姫様、この人たちを殺したらダメだよ。守ってあげないと」

 僕はそう言った。

「しかしフェイ殿。こいつらは我が国に攻撃してきた大罪人ですぞ。このまま見逃すというわけには……」

 ミカエルが言った。

 

「そういうことなら、お二人ともこの国に仕えませんか?」

 そう言う姫様。

「は?」「は?」

 混乱する二人。

 

「いや、我が国は常時人材不足ですからね。あなたたちが仲間になってくれるなら嬉しいですよ」

 そう言う姫様。

「何を馬鹿な……、正気か!?」

 混乱する伯爵。

「そ、そうだよ。いくら何でもそれは……」

 驚くドロテア。

 

「良いじゃないですか。どうせ国に帰ってもロクな事にはならないでしょう? それならコーネリアの一員として過ごしてみたらどうでしょうか?」

 僕はそう言った。

「……」

 悩むアドリアン伯爵。

 

「私はあなたたちを信用できない。……でも、本当に賠償を行ってくれるなら、信じても良い」

 ドロテアはそう言った。

「そうですか。何を求めます?」

 そう聞く姫様。

「……食料を。今、エルティアは食料が足りない。米と小麦がたくさん欲しい」

 ドロテアはそう言った。

 

「認めましょう。ドロテアさん、国に帰り、米と小麦をたくさん渡してあげてください」

 姫様はそう言った。

「……ありがとうございます。そうしてくれるなら、恩に着ます」

 ドロテアはそう言った。

 

「一つ聞きたい事があるのだが……、あの城塞を復旧した将軍は誰だ?」

 そう聞くアドリアン伯爵。

「私ですが」

 僕は言った。

 

「お前か。まだ子供だが……、お前になら、私は仕えても良い」

 そんなことを言うアドリアン伯爵。

「……は?」

 混乱する僕。

 

「あはは、本当ですか!? 良かったですね、フェイ将軍」

 笑う姫様。

「お見事ですぞ、フェイ殿」

 手を叩くミカエルさん。

 

「いやいや、ちょっと待ってくださいよ。僕は見ての通り子供だし、将軍と言っても何か流れでやらされてるだけで。姫様に仕えればいいじゃないですか」

 僕は言った。

「女に仕えるなど私のプライドが持たん。それにお前の戦略眼には敬服した。この私が仕えると言っているのだ。嫌なのか?」

 普通に脅してくる伯爵殿。

「いや、まあ良いですけど……」

 そこまで言われたらそう答えるしかない。

 

「これで話はまとまりましたね。それでは解散しましょう。今日は皆さま、ゆっくりお休みください」

 そう言う姫様。

 

 僕達は解散し、休んだ。

 


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