33話 逆転
僕達が城塞を復旧したことで、戦局は逆転した。
何しろ、こちらは補給がやりたい放題なのに、敵は完全に補給切れだ。龍人族は食料の消費が激しい。持たないだろう。
さすがに事態の重さに気づいたらしく、敵は陣を引き払い、こちらに襲い掛かってきた。だが城塞は完全に修復され、更に僕の指示で強化されていた。
「放て!」
僕の命で、矢が放たれる。次々と面白いように命中し、敵は絶命していく。いくら龍人族が強いと言っても、弓矢をまともに食らえば死ぬ。
敵は後退し、コーネリア領内に取り残されてしまった。姫様達も出陣し、敵を追い詰めていく。
僕達は城塞を出て、敵を包囲した。敵は森の中に追い詰められ、その数を減らしていく。
残る敵は僅か。その時、敵の将軍が叫んだ。
「我こそは龍人の王族、アドリアン伯爵なるぞ。人間よ、我と戦え!」
叫ぶ敵。
しかし決闘に応じようとする者は居ない。僕だと絶対死ぬし。
「降伏せよ! 命までは取らない!」
僕は叫んで言ってみた。
敵は悩んでいるようだ。しかし言った。
「その言葉、嘘ではないだろうな!」
そう叫ぶ伯爵らしき龍人。
「約束する!」
僕は言った。本来なら越権行為かもしれないが、これ以上戦っても無意味だろう。
「わかった、降伏しよう。ただ私の事はともかく、部下たちの命は保証してほしい」
そういう伯爵。武器を捨て、こちらに向かってくる。
「わかりました」
僕は答えた。