31話 戦略会議
僕達はコーネリア城へと籠城した。
この城は、城そのものと城下町があり、城下町も城壁に囲まれている。そう簡単には突破できないだろう。敵が接近してきたが、弓矢を撃って追い払ったようだ。コーネリア兵もまったく弓矢が使えないわけではない。
僕達や姫様達は手早く食事をとり、休む。姫様もすぐに寝たようだ。全員疲れている。警備している兵も居るわけだし、僕もすぐさま寝るしかない。
とはいえ、そう簡単には寝付けなかった。戦争か……。
国では結構いじめられていた。暴力も戦争も嫌いだ。しかし、勝たなければならない。負けてしまえばおしまいだ。まあ、僕は別にこの国の人間じゃないし、逃げることはできるかもしれないが、そういうわけにもいかないだろう。
それに姫様にもドミニクたちにも恩がある。この国にも。まあ大した国じゃないみたいだけど、見捨てるわけにはいかない。そう思う。
しばらくして、僕は寝て起きていた。朝になり、太陽が輝いていた。
敵は城壁の横で陣を張っているようだ。まあ、攻城兵器の類があるわけでもないだろうし、しばらくは大丈夫だろう。
「起きましたか、フェイ」
見ると、姫様が居た。鎧を着ているが、休めたようで、顔色も良かった。
「姫様、おはようございます。敵はおとなしくしているようですね」
僕は言った。
「今はね。これからどうなるかはわからないけど」
姫様はそう言った。
「朝食は食べましたか? フェイ」
そう聞く姫様。
「いえ、まだですが」
僕はそう答えた。
「手早く食べてください。これからの作戦を決めますので」
そう言う姫様。頼りにしてくれるのは嬉しいけど、完全に巻き込まれちゃったなあ……。
朝食は乾パンと干し肉だった。おいしくはないが、文句を言っても仕方ない。食料に限りがあるだろう。
とはいえ、それ程絶望的状況ではないらしい。と言うのも、この城は湖に面していて船が使えるので、近場の街から補給できるのだ。少なくとも、食料が切れるという事はありえない。もちろん水も無限にある。
敵の数は不明だが、100程らしい。こちらは300人は居る。城壁を破られなければ、負けはあり得ないだろう。
僕達は作戦室に入った。主だったものたちが集合し、議論する。
「姫様。それで、作戦はどうなさいますか?」
そう聞くミカエル。
「うーん……」
悩む姫様。
「悩むことなどありません! 今すぐ決戦を!」
そういう強気な将軍。
「いや、それでは負ける。ここは籠城を続けるべきだ……」
そういう弱気な将軍。
「何を馬鹿な! 敵は小勢だぞ!」
そういう強気な将軍。
「馬鹿はお前だ! 敵は龍人族なんだぞ!」
そういう弱気な将軍。
そんな感じで、話はまとまりそうにない。ただ議論が長引くだけだった。
「あー、もううるさい! まともな意見は無いの!?」
叫ぶ姫様。
しかしみんな黙った。まともな意見などないのだろう。
「姫様、ひとつお聞きしたい事があります」
僕は言ってみた。
「フェイ、何ですか?」
そう聞く姫様。
「いや、敵はどうやって補給しているのかと思いまして」
僕は聞いた。
「? そりゃあ、自国から補給しているのでしょう。略奪をしているかもしれませんが……」
そういう姫様。
「いや、多分略奪は無いと思うで。あいつらプライド高いからな」
そういうドミニク。
「ていうか、お前はあいつらの仲間じゃないのか?」
そう聞くミカエルさん。
「いやいや。そんな事言ったら殺されるで。あいつらリザードマンと一緒にされるのが何より嫌いやからな」
苦笑するドミニク。
「そうすると、敵は自国から補給しているのでしょう。そのルートを切れば、何とかなるのでは」
僕は言った。
「なるほど。それはそうですね」
感心してくれる姫様。
「錬金術師らしい卑怯な戦略だな。それで誰が敵の補給部隊を攻撃するんだ?」
そういう強気な将軍。
「そりゃフェイ様がやってくださるんでしょう。そうですよね?」
さも当然のように言う姫様。
「ええ……」
さすがにビビる僕。
「まあ言い出しっぺやしな。ていうか、騎兵隊隊長なんやし適任やろ」
そう言うドミニク。
「そうですな。よろしくお願いしますぞ、フェイ殿」
そういうミカエルさん。
「……まあ言い出したのは僕だし良いですけど、騎兵は船に乗せられるんですか?」
そう聞く僕。
「もちろんですわ。昔から、この湖では馬を船に乗せて人々を襲う湖族が出没したとか。フェイ様もそんな気分で頑張ってください」
そう言う姫様。それだと悪者すぎる。
「あーもうわかりましたよ! 期待せずに待っていてくださいね……」
僕は諦めてそう言った。
「期待して待っておりますわ」
姫様は笑顔でそう言った。