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不遇の錬金術師  作者: 秀一
第二章 湖の国 コーネリア王国編
30/146

30話 敗退


「あはははははははは!」

 笑うドロテア。

 

「何がおかしい……?」

 怒るシギス。

「お前たちはもう終わりだ! 私達は囮だよ。本命は龍人族の方さ」

 勝ち誇るドロテア。

「ちっ、そう言う事か……。隊長! どうします!?」

 叫ぶシギス。

 

「とりあえずドロテアは牢へ……。僕達は迅速に姫様の救援に向かおう」

 僕はそう言った。

「しかし兵士たちも疲れています。ここは休養を取るべきでは」

 そう言うシギスだが。

「いや、恐らく姫様は危機にある。助けに行くべきだ」

 僕は言った。

「……まあ、そうですな。行きますか……」

 疲れながらも、シギスは命令に従った。

 

 僕達は、疲れた体に鞭打ち、姫様の本陣へと向かう。

 

 龍人族の国、ドラコニア。

 

 西方の大国だ。龍人族は、ドラゴンにも劣らないほどの戦闘力を持つ。コーネリア兵が世界最強と言うのはあくまで人間の間での話。龍人族一人の戦闘力は破滅的に高い。

 

 その反面、彼らは繁殖力が低く、人口は少ない。それでも広大な領土を持っているあたり、恐るべき戦闘力の持ち主だ。極めて危険な相手だ。

 

 その龍人族が、西方から大挙押し寄せている。しかも南方のダークエルフを囮に使っての大戦略だ。まさにコーネリア王国の存亡の危機だろう。

 

 僕達は姫様の本陣を発見し、辿り着いた。陣幕の中に入る。中には姫様やミカエル、ドミニクら主だった将が集合している。

 

「フェイです」

 僕は言った。

「フェイ! よく来てくれました。敵はどうなりました?」

 姫様が聞いた。

「撃破し、ダークエルフを一人捕らえました。こちらはどうなっているのですか?」

 僕は聞いた。

「戦況は思わしくない。……、いや、正直絶望的だ」

 ミカエルさんが言った。

「そこらじゅうで味方が負けてるしな。ここにも近いうち敵が来るんちゃうか」

 そう言うドミニク。

 

 テーブルの上に地図と駒が置いてある。戦局を現しているようだ。

 

「姫様、第三部隊、全滅しました」

「第六師団壊滅、逃亡しています」

「第五旅団が敗退、後退しています」


 来る報告は最悪なものばかりのようだ。どこもかしこも負けている。盤上も手の打ちようがないほどにこちらの駒が消えていく。

 

 その時、一人の敵が乱入してきた。騎馬に乗り、こちらに突撃してくる!

 

「もらった! 死ねえ!」

 茶色のトカゲ顔の龍人だ。巨大な剣を振り回し、姫様に襲い掛かる!

「危ない!」

 僕は咄嗟に槍を取り出し、馬に突き刺した。落馬する龍人。すぐさま、ミカエルさんとドミニクが滅多刺しにする。

「ぐあああああああ!」

 叫び、のたうち回る龍人。そのまま死んだ。

 

「ふう……」

 ため息をつく姫様。何とか敵一人を倒したが、このままだとここも危険だ。

 

「姫様、ここはひとまず城内に撤退を」

 僕は言った。

「! しかし、ここを撤退すればこの国の四分の一を明け渡したも同じですが……」

 躊躇する姫様。

「今姫様が死んだらこの国はどうなるんですか! 騎兵も疲労しています。一刻も早く撤退を!」

 僕は言った。

「姫様、ここは無理をしてはいけません。撤退を」

 ミカエルさんも同意してくれた。

「せやで。引き際ってのも肝心なんやで」

 そう言うドミニク。

「……そうですね。わかりました。では退却を!」

 姫様は言った。

 

 退却のラッパが鳴らされ、兵士たちは逃げ出した。僕達は陣を引き払い、コーネリアの城下町へと撤退、籠城した。

 


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