29話 ダークエルフの少女
「勝鬨を上げろ!」
シギスが命じた。騎兵たちは勝鬨を上げた。
「うおおおおおおおおおおおお!」
「勝ったぞおおおおおおおおおお!」
そんなわけで盛り上がるコーネリア兵。少女はただ怯えている。
「おいお嬢ちゃん、何でこんな所に来たんだ?」
兵士の一人が聞いた。
「……」
黙り込む少女。
「黙ってちゃわからんだろうが!」
叫び、脅す兵士。
「ひっ」
怯えながらも、何かを話す気は無いようだ。
「やめろみんな。怯えさせても仕方ない」
僕は言った。
「そうは言いますがね。こいつも敵兵なんだし、ここは拷問でもして情報を聞き出すべきでは」
そういうシギス。少女はさらに怯える。
「そんなことをするべきじゃない。お嬢ちゃん、どうせ何故攻撃してきたか、話してはくれないんでしょ?」
僕は聞いた。
「……お前たちのせいだ!」
そういう少女。
「?」
疑問に思う兵士たち。
「お前たちは私達の森を燃やし、多くの仲間を殺した! だから復讐に来たんだ!」
そう言う少女。
「……」
黙る兵士たち。
「そうか……、そりゃ、すまない」
僕は謝った。
「謝って済む問題じゃない!」
そう言う少女。まあそうだよね。
「勇敢な奴だな……。隊長、こいつどうするんです?」
そう聞くシギス。
「とりあえず、城に連れて帰ろう。処遇は姫様に聞く」
僕は言った。
「ま、そうですな。それが良い」
シギスも同意した。
僕達は彼女をダークエルフの連れていた馬に乗せ、連行する。逃げるのは不可能だろう。
「お嬢さん、僕はフェイ。名前を教えてくれないか?」
僕は聞いてみた。
「……何故?」
そう聞く少女。
「別に良いじゃないか。名前も知らないんじゃあ、不便でしょ」
僕はそう言った。
「私はドロテア。あなたは変わった人ね」
そう言うドロテアちゃん。
「そもそも僕はこの国の人間でさえないしね」
僕はそう言った。
「……? そうなんだ。何故こんな国に仕えているの?」
そう聞くドロテア。
「今の姫様は良い人だよ。前の王様と違ってね」
僕はそう言った。
「……そっか。でもどちらにせよ、もう手遅れだ」
ドロテアはそう言った。
僕達は城下町から城に帰還した。しかし城の中の人数が少ない。
しかも玉座の間は封鎖されていた。
「どうした?」
僕は封鎖している兵士に聞いた。
「姫様は出陣されました」
そう言う兵士。
「出陣? どこに?」
僕は聞いた。
「西部のドラコニアから、龍人族が大挙押し寄せてきたのです。姫様は今、戦っておられます」
兵士はそう言った。