22話 和平
僕達は、和平交渉が行われる場所へと向かった。
そこは木造の小屋のような場所。ファーランド共和国の出張所らしい。つまり、ここはもうファーランド共和国だ。そちら側で和平交渉が行われること自体、両国の力関係を象徴している。
その小屋には、これでもかとファーランド共和国の兵士たちが充満していた。こちらは10人ちょっとしかいないが、相手は200人は居そうだ。
「姫様。もし敵がその気なら、我々は全滅しますぞ」
兵士の一人が忠告した。
「ご心配なく。敵もそこまで愚かではありませんよ」
姫様はそう言った。しかしちょっと震えている。怖いのだろう。
その時、ファーランド共和国の中から、青色のトカゲ男が現れた。
ドミニクよりは相当年寄りに見える。老いが見えるが、眼光鋭く只者ではなさそうだ。
「ようこそ。お待ちしておりましたぞ、リーケ様」
そういう青いトカゲ男。この時初めて知ったのだが、姫様はリーケって言う名前らしい。
「レフ様。お会いできて光栄でございます」
頭を下げる姫様。
「やっほー、リーケさん。元気でやってる?」
そういう陽気そうな小人の男。ただ、小人族よりもさらに小さい。年齢はよくわからないが、若そうだ。
「どうも、シルヴィオ様。今日もお元気そうですね」
笑う姫様。
僕達は小屋の中のテーブルについた。椅子に座り、向かい合う。重要な交渉だ。
「……さて、この度は我が国が色々迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。こちらとしては、和平交渉を是非受けたいと思っているのですが……」
そう言う姫様。
「そういうことならさ、さっさと和平結んじゃおうよ! 和平!」
そう言って書類を出すシルヴィオ。
さすがに驚く姫様とミカエル。
「よろしいので? 何か、賠償でも必要かと思っていたのですが……」
そう言う姫様。
「必要ありませんな。それより、迅速に和平交渉を結んでいただきたい」
低い声でそういうレフさん。
交渉の紙が提示された。和平交渉は、かつてグランテイル帝国との戦いの際に結成された大陸同盟の時代に、概ねどういう感じにするか決められている。端的に言えば、兵士の相手国への侵入を禁じる、と言う感じか。
「わかりました。では、和平を行いましょう」
姫様はそう言ってサインした。
「ありがたい。では、私の名前で」
レフさんが書類にサインした。
書類は二枚作られた。一つはファーランド共和国へ。もう一つはコーネリア王国へ。和平を破ることは世界に対する裏切りになる。できないだろう。まあ姫様がクソ親父と呼ぶ現国王陛下ならやるかもしれんけど。
和平交渉はあっけなく終わった。ファーランドの兵士たちが出立の準備を始める。
「姫様、今日はありがとうございました。この平和が続くことを祈っていますぞ」
そういうレフさん。
「ええ、こちらこそ。今後ともよろしくお願いいたしますね」
姫様は笑顔でそう言った。
「んじゃまたねー、リーケちゃん!」
シルヴィオはそう言って去って行った。