18話 氷柱鉱山
そんなこんなで、僕達は馬に乗り、鉱山へ向かう。
姫様は白馬だ。白馬に乗ったお姫様だ。……やっぱり、何かを間違えているような気がする。ミカエルさん、ドミニク、僕が続く。3人の馬は普通の栗毛だ。
鉱山はすぐ近くだった。ドワーフが一人居た。
「ここは閉鎖ですよ」
そう言うドワーフ。
「構いません。このフェイ様が鉱山を再開してくださいます」
やっぱり無茶を言う姫様。
「そうはおっしゃいますが、姫様。あの猪は相当に危険な相手ですぞ」
そういうドワーフ。敵は猪なのか。
「ふむ、そうですか。フェイ様、どうするのが良いと思います?」
そう聞く姫様。
「そうですね。罠を仕掛けるとか……」
僕はそう言った。
「時間がかかり過ぎますな」
ミカエルは言った。
「もうええやん。適当に倒して帰ろうや」
投げやりなドミニク。
その時猪が一頭、鉱山から飛び出してきた。中には一杯いるのだろうか?
「フェイ様、今こそあなたの力を見せる時です!」
やっぱり無茶を言う姫様。
「まったく……」
悪態をつきながらも、僕は弓矢を構えた。射撃するが、惜しくも外れた。
イノシシは激怒し、こちらに突進してくる。僕は再度矢を放つが、上手く当たらなかった。
「つぇい!」
ミカエルさんが剣を構え、イノシシをぶった切る。真っ二つに斬られ、吹っ飛ぶイノシシの肉片。
「さすがやな」
そういうドミニク。
「弓矢に頼るなど、男らしくないですぞ」
そう言うミカエルさん。もうこの人だけでいいんじゃないかな。
僕達は鉱山へと侵入する。青く光る壁。まさに氷柱石の鉱山だ。
「フェイ様、ここは何か役に立つアイテムとかありませんか」
そういう姫様。
「ポーションならたくさんありますが。使われます?」
僕は聞いた。
「ありがたいですね。じゃあ一つ」
姫様はポーションを受け取った。
「それがしも一つ」「ワイも」
そう言うミカエルさんとドミニク。
中には猪がたくさん居た。僕は弓矢を放ち、一体を仕留めた。
「お、大したものですね。ていうか、弓矢って我が国ではあんまり使う人いないんですよね」
そう言う姫様。
「そうなんですか? 意外ですね」
僕は言った。
「我が国の民は幼少より剣術を鍛えておりますからな。弓矢など卑怯と言われます」
そういうミカエルさん。その騎士道精神は賞賛すべきなんだろうか?
「まあ、ワイが剣を使うのは趣味やけどな。この国の連中は基本剣しか使わんな」
そういうドミニク。
「剣こそ熟練が必要な武器かと思いますがね。アルパでは槍を使いますし」
僕は言った。
「まあ、そうなのですか。槍なんて、接近されたら使えないと思いますが」
そう言う姫様。
「たくさん並べて敵を滅多刺しにするんですよ。集団戦だと強い武器ですね」
僕は言った。
そうこうしてるうちにもイノシシはやってくる。僕は射撃したが外れた。ドミニクが襲い掛かり、敵を刺し殺した。
「数は多いみたいやけど、どうってことはないな」
そういうドミニク。
「油断はなさらず。猪は危険な相手ですよ」
一応忠告する僕。
その後も猪が襲ってくる。射撃するが、また外れた。僕はヘタクソだ……。
「たあ!」
姫様が剣を抜いた。青く輝く氷柱石の剣だ。敵を切り裂くと、まるでチーズのように敵は切り裂かれ、血を噴き出して死んだ。
「ふう。血で汚れてしまいますわね」
そんなことを言う姫様。実際ちょっと汚れている。
「こんなこと言うのも何ですが、僕が来る必要無かったんじゃ」
僕はそう言った。
「まあそういうなや。旅は道連れ世は情けってね」
そういうドミニク。
更に奥地へと進む。今度は二体同時に襲い掛かってきた。一体を射撃して倒した。もう一体が、姫様に襲い掛かる。
だがその突進を華麗にかわす姫様。ミカエルが剣を横なぎに動かし、敵を切り裂いた。猪は倒れた。
「それにしても、見事な剣技ですね。三人共」
僕は言った。
「まあそらせやろ。この国でも最強に近い三人やろうしな」
そう言うドミニク。
「ミカエルが一番上手いですけどね。年の功ってやつ」
そういう姫様。
「別に姫様が剣術を極める必要は無いのですが……」
そう言うミカエルさん。
僕達は最深部へと辿り着いた。そこには巨大な猪が居た。
「女王というわけですね」
そう言う姫様。
「どういう生態なんでしょうか……」
僕はそこが気になった。
巨大な猪が襲い掛かる。だが、僕達4人は余裕でかわす。
「はあ!」「てい!」「ふん!」
連続攻撃をかける三人。しかし敵の皮膚が硬すぎ、有効にダメージが入らない。
ドドド、とミカエルさんに突撃する。ミカエルさんは激突され、吹っ飛ばされた。
「ぐああ!」
どしゃあ、と倒れるミカエルさん。あの衝撃はまずい。
「くう……」
悩む姫様。どうすべきか。
「ちい……」
ドミニクも混乱する。勝ち誇る猪。
「もったいないけど、やるしかないか……!」
僕は赤く輝く魔力のポーションを取り出した。本来は魔力を回復するためのものだが、別の使い方もある。
「はあ!」
僕は敵にぶん投げた。イノシシの顔面に命中し、大爆発が起こる。
「GAAAAAAAAAAAAA!」
叫ぶイノシシ。苦しんでいる。
「チャンス!」
ドミニクが前進し、敵を刺しまくる。刺突が皮膚をえぐり、深い傷を与えた。
「もらった! つああ!」
姫様も剣をぶっ刺す。
「くらいなさい! 《魔力爆発》!」
そして剣の先から凄まじい魔力を放ち、爆発させ、敵の体内を破壊した。
「GAAAAAAAAAAAAAAAA……」
イノシシは倒れ、動かなくなった。