15話 店
その日は、王城の部屋に泊めさせてもらった。良い部屋だった。
翌朝、食事が終わると、玉座の間に呼び出された。エルフは呼ばれていないようだ。
「よく来ていただけましたわ、フェイ様。それでは、店に参りましょうか」
姫様はそう言った。
城を出て、すぐの所。一等地も一等地の場所に、巨大な店が出来ていた。道具屋か何かを潰したのだろうか? 恐るべし……。
「ここでよろしいですか? フェイ様」
そんなことを言う姫様。
「……ありがとうございます。しつこいですが、本当によろしいので?」
僕は聞いた。
「ええ」
姫様はそう言った。
店はカウンターになっている。その裏には、控室もあるようだ。工房にちょうどいいだろう。
「ありがとうございます。お礼できればいいのですが……」
そう言う僕。
「期待しておりますわ。店番については、商人ギルドから派遣するように言っておきましたので」
そう言う姫様。
「何から何までありがとうございます」
僕はそう答えた。
「それでは、頑張ってくださいね」
そう言って、姫様は去って行った。
店の周りには、ざわざわと人々が集まっていた。話し声が聞こえる。
「何だこの店は……」
「またあの姫様がなんかやらかしたのか……」
「やあねえ。王様がいなくなったからって……」
そんな声が聞こえる。あの姫様、あまり良い目で見られていないようだな。
しばらくすると、馬に乗ったエルフ二人が現れた。クリフさんとイルヴァさんだ。
「やあフェイ。悪いが、私達は国に帰らねばならん」
クリフさんは言った。
「ごめんねフェイ君。本当なら、君の店を手伝いたいんだけど」
イルヴァさんはそう言った。
「いえ。むしろ付き合わせてすいませんでした」
僕はそう言った。
「悪いな。また会おう」
「またねー」
そう言って二人は馬を走らせ、去って行った。