145話 エリクサーの秘密
アルパ王、死す――。
その事件はすぐさま知れ渡った。ある者は驚き、またある者はそんなには驚かなかった。
王には二人の男子が居た。しかし兄はハイランド共和国に恭順していたし、弟はオステアに居たが、ファーランドに降伏することを選んだ。
結局、アルパ王国の東半分はファーランドに降伏し、西半分はハイランド共和国としてファーランドと和平を結んだため、戦争は終わった。
結局、一ヶ月ほどの戦争だった。犠牲も多かったが、まずは終わった事自体を喜びたい。
僕は戦後処理を行った。と言っても、賠償を求めたりはしなかった。その代わり、今後異種族を差別したりしないように法律を整備し、自国内に守らせた。
他国にはどうこう言わなかったが、ベルクランドに対しては爆石の採掘を控えるように頼んだ。いずれにせよ、ベルクランドももう無秩序に爆石を採掘したりはしないだろう。
「ふう……」
僕は学長室でコーヒーを飲んでいた。殺風景な部屋だが、まあ物を置いても仕方ない。
「お疲れ様だったな、フェイ」
そう言ったのは、ブランカ師匠だ。師匠もすっかり慣れてくれたようだ。
「確かに疲れました。しばらくは休みたいです……」
僕は素直にそう言った。
「あ、でもいずれはエリクサーの作成に挑戦したいですね」
僕はそう言った。
「あー、その事なんだが……」
師匠は言いにくそうに言った。
「何か?」
僕は聞いた。
「エリクサーとか、私の冗談だから」
とんでもない事を言う師匠。
「はあ!? どういうことですか!?」
僕は聞いた。
「いや、だってお前そう簡単には旅に出そうになかったし。大体そんな凄い薬とかあるわけないだろ。ちょっと考えればわかるじゃないか」
無茶苦茶を言う師匠。
「酷いじゃないですか! 騙したんですか!?」
僕は言った。
「まあな。悪かった」
詫びる師匠。いやいや……。
「もっとも、お前はエリクサーよりも大事なものを手に入れたような気がするけどな」
師匠は言った。
「まあそりゃそうかもしれませんが……」
イマイチ納得できない僕。
「お前ならもっと凄い物が作れるさ。それに色んな人との絆も大事だぞ。それが一番重要な事なんだ」
師匠は言った。
「まあ、そうですね」
僕は言った。