142話 王都奇襲作戦(後編)
「火事だあああああ! 火事だあああああ!」
「いや、敵襲だああああああ!」
「反乱だああああああ!」
街から怒声が上がる。
港近くの家々は燃え上がり、焼け出された人々が着の身着のまま、逃げ回っていた。
家から家へと火は燃え移る。風が強い日だった。しかも暗い。そのままどんどん燃え広がり、アルパの街は炎に包まれていった。
「第7街区焼失! 第8街区に燃え広がっています!」
「負傷者多数!」
「陛下! 街の者たちが救援を求めています!」
とはいえ、王は迷った。
この城に燃え移る可能性は低い。街と城は堀で隔離されているし、城は石が主であるから、燃えないだろう。
だが街は悲惨なことになっているようだ。どこをどう救援すれば良いと言うのか。
「陛下、良いじゃないですか」
トリュスは後ろからそう言った。
「うん……? 何がだ」
王は聞いた。
「わざわざ危険を冒すことはありません。火が収まるのを待ちましょう」
トリュスはそう言った。
王はその進言を受け入れた。どちらにせよ、王ができることがあるわけでもない。
結局、アルパ王都のほとんどは火に包まれ、焼失した。
次の日になると、街は更に悲惨なことになっていた。
家を失った人々は街を去って行ったが、去ることもできない人たちはここで暮らすしかない。結果、略奪や暴行が横行し、治安は極度に悪化していた。
城は食料の買い付けさえ難しくなった。城内には兵士や女性たち、官僚なども多い。それらを養う事が難しくなってきた。
「どうしたものかな……」
王は悩む。
「陛下、とりあえずオステアに行かれては」
トリュスはそう言った。
オステアはファーランドとの国境に位置する港町だ。ファーランドとの前線に当たるため、安全とは言えないが、兵は多い。
「ふむ、そうだな。行くとするか」
王はそう言って、兵を集め、オステアへと移動した。