141話 王都奇襲作戦(中編)
その日、アルパ首都では戦勝パーティーが行われていた。
ハイランドの陥落。……実際の所、その後の戦歴は芳しくなかったかもしれないが、そんなことは首都の国民にも王にも正しく伝わってはいなかった。
アルパ王国、いやアルパ帝国による絶対的な勝利。
それを誰一人疑っては居なかった。街ではそこいらじゅうで酒盛りが行われ、王の偉大な勝利を祝っていた。
王もまた、ハーレムの女性たちと勝利を祝っていた。
「あはは! おめでとうございます! 陛下!」
そう言って、美しい女性たちが祝福する。
「はっはっは。めでたい、めでたい」
王はそう言って喜んでいた。
そうして連日連夜、祝宴が開かれ、街はお祭り騒ぎだった。
「陛下、おめでとうございます」
そう言って、一際美しい女性がドレスを着て現れた。銀色の長髪と青い瞳。王の一番のお気に入りだ。
「おお、トリュスか。今日も美しいな」
王は言った。他の女性たちはあからさまに嫉妬する。
「ありがとうございます、陛下。ささ、お飲みになって」
そう言って酒を勧めるトリュス。王も上機嫌だ。
「父上、ここにいらしたのですか」
やってきたのは王の娘、マリーセ王女だ。
「マリーセ。どうした? ここに来るものでは無いぞ」
王は言った。
「ちょっとお耳を……」
マリーセは王にこっそりと言った。テオドール将軍に裏切る気配があると。
「確かなのか?」
王は聞いた。
「わかりませんが……」
マリーセは確信を持っているわけではない。
「ワシとテオドールは旧知の仲じゃ。あいつが裏切るとは思えん」
王は言った。
「父上がそうおっしゃられるなら、構いませんが」
マリーセはそう言った。
その時だった。
ドーン! と凄まじい爆音がした。
「何事だ!」
王は叫んだ。きゃーと黄色い声が鳴り響く。
「父上、港の方が!」
マリーセは叫んだ。
港の方に赤い光が放たれていた。燃えている。
「火事か? むう……」
王は仕方なく、玉座へと戻って行く。しかし……。
ドーン! ドーン!
その後も爆音が続いた。