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不遇の錬金術師  作者: 秀一
最終章 大戦編
139/146

139話 密約


 その日の夜。

 

 僕とテオドール将軍は、指定された場所で落ち合った。そこには小屋があり、その中に入った。

 

 兵士はお互い僅かしかいない。完全な秘密の交渉だ。明かりさえない。暗闇の中だ。

 

「やあ、フェイ君」

 テオドール将軍はそう言った。壮年の騎士だ。力に満ちた男、という感じか。ただ、少し疲労感もある。

 

「お久しぶりです、テオドール将軍」

 僕はそう言った。

 

「ふむ、あの議会の時に会ったな。……そういえば、君はどこの出身だね?」

 そう聞くテオドール。

「アルパです」

 僕は言った。

 

 驚いた顔をするテオドール。

「そうであったか。ふむ。そうであれば話は早いな……」

 テオドール将軍はそう言った。

 そして意を決しこう言った。

「私はアルパ王国を裏切ろうと思う」

 そう言うテオドール。

 

「……何故です? あなたは将軍で、大権を与えられているでしょう。またどうしてそんなことを?」

 僕は聞いた。純粋に疑問だ。

「まあな……。しかし王は十分に軍への支援を行ってもくれん。側近はクズのような連中ばかりで、私の悪口ばかり言っているようだ。ハイランドを落としたのに、私のことを更迭しようとしているという動きもある」

 テオドール将軍はそう言った。

 

「そうなのですか……。酷いですね」

 僕は言った。まともな国家とは思えない。

「そう、酷いのだ。……とはいえ、私としても、いきなりファーランドに寝返るのは無理だ。立場もあるし、兵や支配下の街の手前もある。そこでまず、『独立』をしようと思う」

 テオドール将軍は言った。

「独立ですか?」

 僕は聞いた。

 

「そう、独立だ。『ハイランド共和国』という国を作る。冗談ではなく、ちゃんとした国だ。既に統治機構も用意しつつある。が、すぐにとはいかん。きっかけがほしい」

 テオドール将軍はそう言った。

「きっかけ、と言いますと……?」

 僕は聞いた。

 

「何でもいい。アルパで何かを起こしてくれ。それを合図とする。……もちろん、状況によっては私も違う行動をするかもしれんが、その『合図』に基づいて、独立を宣言する、というケースもあるということだ。確約できないのは申し訳ないがな……」

 将軍は言った。

 

「私としては、それで十分です。しかし将軍、あなたはアルパに希望を持てませんでしたか」

 僕は言った。

「そうだ。持てなかった。残念だがな。だが、私は君のような若者が作る新しい国に希望を持ちたいのだ。いつの日か、君の国に加えてくれ」

 テオドール将軍はそう言った。

「わかりました。必ずや」

 僕は言った。

「うむ……。言うまでもないことだが、今日ここで会ったことは極内密に頼む」

 テオドール将軍はそう言った。

「もちろんです」

 僕は言った。



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