138話 裏切り
コーネリアを姫様とドミニクに任せ、僕達はファーランドへと帰還した。
街には安堵が広がっていた。今回の戦勝の効果は大きかったようだ。突然首都に襲ってきた敵を撃破したのだから、当然だろう。
僕は兵士たちを配置したり解散したりして、城内へと入った。
「おかえりなさいませ。ふふ、すっかり英雄様になってしまいましたね」
白いドレスを着たバレンティナさんがそう言ってくれた。
「そんなことはないですよ」
僕は言った。
「そうでしょうか。それはともかく、レフさんがお待ちですわ」
バレンティナさんはそう言った。
「わかりました」
僕は答え、レフさんの部屋に急いだ。
「失礼いたします」
僕はレフさんの部屋の扉をノックし、入った。
「おお、おかえり、英雄殿」
そう言うレフさん。
「そんな呼び方はやめてください」
嫌な気分はしないが、そう呼ばれても仕方ない。
「ふふ、これは失礼した。フェイ殿、実はな……」
そう言って手招きするレフさん。
「? どうしました?」
僕はレフさんの近くに寄った。
「実は、アルパのテオドール将軍が、こちらに裏切ろうとしているようだ」
レフさんは言った。
「確かなんですか?」
僕は聞いた。ちょっと信じ難い。
「わからん。が、こちらと接触したいようだ。先のイリスでの戦いが効いたようでもある。危険ではあるが、交渉する価値はあるだろう」
レフさんは言った。
「そうですね。どこで交渉を?」
僕は聞いた。
「こことハイランドの中間点だ。今夜、秘密裏に会いたいらしい」
レフさんは言った。
「わかりました……」
僕は言った。
「危険かもしれん。警戒しておけ」
レフさんはそう言った。