136話 割譲
その日の夜。
「申し上げます! ベルクランドのコンラートと申す者が交渉を求めております」
兵士は言った。
「コンラート?」
僕は聞いた。
「ベルクランドの老将だ。信頼できる相手だろう」
ブランカ師匠は言った。
「わかりました。会いましょう」
僕は言った。
互いの兵士たちが見守る中、中間点で僕達2勢力の代表は向かい合った。松明が轟轟と燃えている。
「ベルクランドのコンラートだ」
コンラートと名乗る老いたドワーフの男性は言った。思慮深そうな感じの白髭の男だ。
「ファーランドのフェイです」
僕はそう名乗った。
「私はウルと申します。ミカ様はご無事ですか?」
ウルと名乗った長身の眼鏡ドワーフは言った。
「私なら無事だ」
ミカは言った。後ろ手を縛られてはいるが、別に危害は加えていない。ドワーフたちにも安堵が広がる。
「それでは和平交渉と参りましょうか。我々としては、ミカ様を返して頂きたいのですが」
コンラートはそう言った。
「構いませんが、タダでとはいきません。今回の戦争、どう考えてもそちらに非があります」
僕はそう言った。
「……うむ、そうですな……」
天を見上げるコンラート。
「コンラート、私の事は気にするな」
ミカはそう言った。
「そう言うわけには参りません。いかがでしょう、フェイ殿。コーネリア国の東半分を返還しましょう。その代わり、ミカ様を返して頂きたい」
コンラートはそう言った。
東半分か。
大きい、と僕は思った。コーネリアの首都は西側だが、東側も豊かな土地だ。というか、普通領土を割譲することは国家としてはありえない。それだけミカさんが大事なのだろう。それより何より、今はベルクランドと和平を結びたいところだ。
「わかりました。その条件で和平を結びたいが、よろしいですか」
僕は言った。
「おお、ありがたい。それでは、和平を結びましょう」
コンラートはそう言った。