135話 恨みとお人よし
ベルクランド軍は多くが退却。残された兵は次々と討たれた。
ミカも勇敢に戦ったが、多勢に無勢、捕らえらえた。
「くう、離せ!」
縄をかけられ、ミカは僕たちの前に引き出された。
「久しぶりだな、ミカ」
そう言ったのは、ブランカ師匠だった。
「お前はブランカ!? 生きていたのか……」
ミカは驚いた。
「師匠、知っているのですか?」
僕は聞いた。
「ベルクランドに居た時、良く組んでいた相手だ。優秀なドワーフだよ」
ブランカ師匠は言った。
「お前はベルクランドでも随分出世していたじゃないか。何故裏切った!?」
そう叫ぶミカ。
「他者を犠牲にする国家で出世しても仕方ない。私はそう考えたのさ」
ブランカ師匠は言った。
「詭弁を言うな! ファーランドなら正義の味方とでも言うつもりか!」
ミカはそう叫んだ。
「そんなことは言わん。ただ、私の弟子はお人よしでね。手を貸してやりたいと思ったのさ」
ブランカ師匠はそう言った。
「……ふん、まあいい。それでそのお人よし君は、私をどうするつもりだ?」
ミカは自嘲気味にそう言った。
「その前に聞きたいのですが、あなた方は何故コーネリアやファーランドに戦争を?」
僕は聞いた。
「……」
ミカは黙った。
「爆石の取りすぎで、ベルクランドはドワーフが住める国では無くなったのだろう。だから豊かな土地を手に入れようとしたんだ」
ブランカ師匠は言った。
「……まあ、そう言う事だ」
ミカはそう認めた。
「冗談じゃない! お前たちのせいでどれだけ迷惑が広がったか! 死んで償え!」
エルフの王女、ヴァンダはそう言って銃を構えた。
「待った待った。待ちなよヴァンダ」
僕はそれを下げさせた。
「何故邪魔するんです先生!」
叫ぶヴァンダ。
「落ち着け。こいつを殺したって、何の解決にもならないさ」
僕は言った。
「私の気がすむ!」
ヴァンダは叫んだ。
「お前、エルフの王女か……」
ミカは言った。
「そうだ! 何か言い残すことがあれば言ってみろ!」
銃を構えるヴァンダ。
「……言う事なんかないさ。殺したければ殺せばいい」
ミカは言った。
ヴァンダは悩む。
「落ち着けヴァンダ。こいつが悪意を持ってエルフを滅ぼしたわけじゃないさ」
ブランカ師匠は言った。
「それはそうかもしれませんが……」
ヴァンダは銃を下げた。
「それで? 私をどうするのかの答えを聞いてないが」
ミカは言った。
「殺したくは無いけど、あなたを返すわけにもいかない。とりあえずは、師匠に任せます」
僕は言った。
「私に投げるのか……。まあ良いけど」
ブランカ師匠はそう言った。