131話 ベルクランド軍
ファーランド共和国西部。
ファーランドがコーネリアとの国境沿いに設置していた哨戒所は、元々警備が手薄だった。ベルクランドのドワーフたちの大砲による砲撃を受け、瞬く間に破壊された。
ドワーフたちは、この場に仮の陣を敷いた。
「やれやれ、つまんないわねえ」
そういう女ドワーフ。赤い髪の壮年の女性で、煌びやかな赤い鎧を着ている。彼女がこの部隊のリーダーのようだ。
「ミカ様、油断めさるな。ファーランドとて、兵なしというわけではありませぬ。最大限の警戒を」
そう言う隻眼の老ドワーフ。熟練の兵士のようだ。
「あーはいはい。まったく、あなたの慎重さにも参るわ。別に本日中にファーランドを落としても良かったんじゃない?」
ミカと呼ばれたドワーフの女はそう言った。
「ミカ様、ファーランドを落としてもアルパを喜ばせるだけです。それよりは、やはりジャムルを落とすべきかと」
そういう眼鏡をかけた若いドワーフの男。彼が軍師だろうか。
「緑風石だっけ? 役に立つの?」
ミカは聞いた。
「使い方にもよりますが……。矢にすればいくらでも飛び、必ず命中するとか」
軍師らしき男はそう言った。
「ふん、エルフじゃあるまいし。矢なんて不要よ。私達には、この爆石砲があるじゃない」
ミカはそう言った。
「しかしこれは限りがありますからな。これまでのコーネリアでの戦いでも、湯水のように使ってしまいましたし」
老ドワーフはそう言った。
「だからこそよ。ファーランドの首都を落としたら戦争も終わるでしょ」
ミカは言った。
「それはそうかもしれませんが……。この際、ファーランドと和睦しても良いのでは」
軍師らしき男はそう言った。
「冗談じゃないわ。私達は勝つ。なのに和睦? 論外よ」
ミカは言った。
「そうだぞウル。ここまで来て、それは無かろう」
老ドワーフは言った。
「ふむ。コンラート様なら、分かっていただけると思いましたが……」
ウルはそうつぶやいた。
「攻撃は明日よ。ファーランドの命運も明日までよ」
ミカはそう宣言した。
「はっ」「はっ」
二人はそう答えた。