129話 貸与
そして……。
「や、やったぞ! 我々の勝利だ!」
ルシールさんの声。それに応え、うおおおお! と勝鬨の声があがる。
わああ、と兵士たちがやってきた。
「すげえな! 大砲ってのは!」
「大したもんだ!」
「ありがとう! ありがとう!」
感謝の声を聞いて、生徒たちも表情が緩む。イリスは何とか救われたのだ。
僕達は補給物資を運び入れていた。もっとも、イリスには海から補給できているので物資に余裕はあるが、やはりそれだけでは不安だろう。
まだ敵がやってこない保証はないので、警戒は続けるが、僕達は街の中で休ませてもらうことにした。僕はルシールさんの屋敷に招かれた。
「お見事ですわ。さすがにもう駄目かと思いましたが……」
ルシールさんの娘、カンデさんはそう言った。
「はっはっは。流石俺の見込んだ男の事はあるな!」
そんな事を言うルシールさん。お酒を飲んでいた。
「あれだけの打撃を受ければ、そうはイリスには近づかないでしょう」
ユリアナはそう言った。
「そうだな。……しかし、あの大砲ってのもすげえ武器だな。うちにもいくつか貸して貰えねえものかな」
そういうルシールさん。
「あまり余裕はないですが、イリスの防衛の為に置いておいた方が良いかもしれませんね」
僕はそう言った。
「お、本当かい!? そりゃありがてえが、良いのか?」
そう聞くルシールさん。
「アーダ、どう思う?」
僕はアーダちゃんに聞いた。
「ん、そうですね。まあ撃ち方とかも教えないといけないとは思いますが、半分くらいなら良いですよ」
アーダちゃんはそう言った。
「おお、本当か! そりゃありがてえな。まあ任せとけ。こんな戦争、すぐに俺が勝利させてやるからよ!」
ルシールさんは、上機嫌になってそう言っていた。