128話 イリスの救援
「フェイ司令、ここにおられましたか」
その時ファーランド兵の伝令がやってきた。
「どうかしたか?」
僕は聞いた。
「イリスの状況は、刻一刻と悪化していると」
伝令は言った。
イリスは敵の攻撃を耐え続けている。しかしこのままではまずいだろう。
「わかった。救援に行くと伝えてくれ」
僕は言った。
「わかりました」
そう言って伝令は港へと向かった。船で伝えるのだろう。
「もう一刻の猶予もありませんね」
ユリアナは言った。
「やるしかないか……」
僕はそう言った。
僕は全部隊を集結させた。しかし兵士は500人程しかいないようだ。半数が離脱してしまったことになる。とはいえ、この戦況では仕方ないのかもしれない。
「先生、体は大丈夫なのですか?」
そう聞くエドウィン。
「ああ、たっぷり休んだからね」
僕は言った。
「無理はしてほしくないが、あまりだらけてもな」
ブランカ師匠はそう言った。
僕は舞台の上に立ち、演説をした。
「諸君! 反撃の時は来た! 今こそイリスを救おう!」
僕は叫んだ。おー! と声をあげてくれる兵士も居るが、反応は薄い。やはり自信を無くしているのだ……。
僕達はいよいよカランから出撃した。カランからイリスまでは街道を通れば大した距離は無い。
イリスの南側に到達した。ここに敵は居ないようだ。僕は門に近づいた。
「カランより救援に来た! 門を開けてくれ!」
僕は叫んだ。
しばらくして、門は開かれた。
「お疲れ様です! すぐさま北門に救援を!」
門番は言った。
僕達が北門まで進むと、そこは大変なことになっていた。敵の攻城兵器の塔の群れが見え、門をたたくハンマーの音がひっきりなしに響いている。
「怯むな! 東部の守備を固めろ!」
叫ぶドワーフのルシールさん。
「ルシールさん、救援に来ました」
僕は言った。
「おお、フェイ君。しかし今は忙しい! 北門から迫る敵を何とかしてくれ!」
そういうルシールさん。
僕達は力を合わせ、城壁の上に大砲を上げた。狙いを定める。
「大砲による斉射をかけよう。撃てるな?」
僕は聞いた。
「もちろん!」
アーダちゃんがそう言った。
大砲を準備する。皆慣れては居ない。初めての実戦投入だ。遅れる大砲がある。しかしもう待っている暇はない!
「火をつけろ! 射撃準備!」
僕は叫んだ。
火縄に火がつけられ、ジジジ……と進んでいく。そして……。
ドーン! と大砲が放たれた。
ヒュルルルル……。ドカーン!
「な、なんだ!?」「うわああああ!」
敵が混乱する。攻城塔の一つが損傷し、崩れた。
おおお、とイリス軍からも歓声があがる。
「す、すげえな。大砲か!」
叫ぶルシールさん。
「ひるむな! 進撃だ!」
敵は態勢を立て直し、城壁に殺到してくる。矢を放ち、跳ね返そうとするイリス兵。
「榴弾用意!」
僕は命令を下した。今回の切り札だ。
榴弾が搭載され、再度射撃準備が行われる。
「放て!」
僕は命じた。
ドーン! と弾が放たれ、敵に命中。そして爆発し、燃え上がった。
「うわあああああ!」「ひいいいいいい!」
今度こそ大混乱に陥る敵の群れ。攻城塔は燃え、崩れ落ちる。敵の部隊も燃え上がる。
「良しいいぞ! 敵に態勢を立て直させるな! 次弾装填!」
僕は叫んだ。
「こ、これは駄目だ! 退却! 退却!」
叫ぶ敵の部隊長。
「こ、こら! 逃げるな! 逃げると死刑だぞ!」
叫ぶ敵の司令官。
次々と放たれる砲撃を受け、敵は壊乱。生き残りは逃げて行った。