127話 フェイの復帰
「はい、あーん」
そう言ってリンゴを切ったものをくれる姫様。僕は食べた。
「ありがとうございます、姫様。でも僕は大丈夫ですから」
僕は何か恥ずかしくなっていった。
「何言ってるの! 動いたら駄目だよ。また病気になるから!」
そう言う姫様。
「あはは、姫様ってばぞっこんだね。それにしても、そろそろ動かないとフェイ君もデブになると思うんだけど?」
そう言うドロテア。
「そうだよね……。そろそろ動いて良い?」
僕は聞いた。
「駄目! もっと休むの!」
そう言う姫様。そう言われてもなあ……。
「駄目だぞ姫様。人間、多少は動かないと」
ブランカ師匠もそう言った。
「んー、そうですか。んじゃちょっとだけ動いて良いよ」
そう言う姫様。
「はあ……」
僕は立ち上がった。
本当に久しぶりだ。ていうかちょっとだらけ過ぎかな……。ついつい姫様に甘えてしまった。
「少し学内を見て回ります」
僕は言った。
「私も行くー!」
姫様は言った。
「あーもう、行ってらっしゃい」
付いていけない感じのドロテア。
僕は姫様と、学園を見て回った。そうすると、エルメ達は不思議な事をしていた。何か鉄の棒みたいなのを構えている。
僕と姫様は訓練場へ行った。丁度、ユリアナが笛を吹き、部隊を動かしていた。
「構え! 撃て!」
叫ぶユリアナ。ドドドーン! と凄い音がして、的が粉々になった。
「うわ! 何!?」
驚く姫様。あれは……。
「やあユリアナ。変わったことをしてるね」
僕は言った。
「これは先生。もうお体はよろしいので?」
そう聞くユリアナ。
「だいぶね。あれは、火薬兵器かい?」
僕は聞いた。
「ええ。火縄銃です。生徒たちが意見を出して、色々改良したんですよ」
ユリアナは言った。
「そりゃあ凄いな……。良い事だ」
僕は言った。
「こちらには大砲もありますぞ。これだけあれば、そう簡単には負けぬかと」
魔族のムース氏がそう言った。
「大砲についても、訓練を?」
僕は聞いた。
「ええ。ただ、あれを当てるのは至難の業だと思いますけどね」
ユリアナはそう言った。
僕は生徒たちの訓練を見て回った。銃は引き金を引くと火縄が飛び込んで撃てるようになっているし、火薬の量も紙袋に入れて調節してあるようだ。
「凄いね。これ全部ユリアナが?」
僕は聞いた。
「まさか。みんなで協力した成果ですよ」
ユリアナは言った。
「でもユリアナが色々やったのは確かだけどね。ファーランド兵の中には、ユリアナが指揮するのを嫌がる人も居たけど……」
エルメは言った。
「そっか。面倒事を押し付けてごめん。僕もまた頑張るから、補佐を頼むよ、ユリアナ」
僕は言った。
「ええ、もちろんです」
ユリアナはそう言った。