126話 アルパ王城にて
アルパ王国首都、王城。
その玉座には、もちろん王が居た。64歳。長生きと言える。
しかしあまり体調は思わしくなかった。時々頭痛に悩まされる。
「うぐ……!」
痛みに顔をゆがめる王。
「陛下、大丈夫ですか?」
おつきの女性が優しい声で言った。
「ああ……。何、どうということはない」
王はそう言った。
王は思い出す。かつて王は、頭痛に悩まされ、その治療を錬金術師・ブランカに頼んだ。だがブランカは、この病気は治せない、もし治せるとしたらエリクサーが必要だと言った。
だから王はそれを求めたのだが、ブランカはいつの間にか姿を消してしまった。
もっとも、王はエリクサーの存在など信じてはいなかった。誰に聞いても、そんなものは無いという始末。
そして王は、色々な医者に自分の病気を治すように頼んだ。
だがどの医者も、この病気は治せないの一点張り。業を煮やした王は医者を皆殺しにした。
そして錬金術師がファーランドに居ることを知ると、ファーランドに宣戦布告。戦争を始めたのだ。
「エリクサー、か……」
それは言わば妄執。狂気に近い。だが王である彼の権力は絶対だ。その王の権力で手に入らないものなどあるものか。
「陛下、マリーセ様、テオドール様、戻られました」
伝令がやってきてそう言った。
「おお、そうか。通せ」
王はそう言った。
「はっ!」
伝令はすぐさま走っていった。
すぐさま、ドレスを着た女性と鎧を着た騎士がやってきた。王にとっては、もちろん見知った顔だ。
「お父様! 全く、ファーランドの連中は無礼な奴らばかりでしたわ!」
開口一番、そう言うマリーセ王女。王に近づいた。
「おお、お帰り、マリーセ。それで、どうだった?」
そう聞く王。
「申し訳ございません、父上。私は言を尽くしたのですが、連中は頑なで、どうにもなりませんでしたわ」
そう言うマリーセ。
「ふむ……、そうか……」
目をつぶる王。
「申し訳ございません、陛下。私が付いていながら、何の成果もあげられず」
テオドール将軍はそう言った。
「良い。ハイランドを陥落させたわけであるしな。その功績には報いよう」
王は言った。
「ありがたき幸せにございます」
テオドール将軍は頭を下げ、感謝した。
「そういえば、錬金術師には会わなかったか?」
王は聞いた。
「錬金術師?」
疑問に思うマリーセ。
「確か、今回の和平を邪魔した者が錬金術師だったかと」
テオドール将軍はそう言った。
「ふむ、そうか……。やはり錬金術師は、私の邪魔をするか……」
王はそう言った。
「お父様、何か気になることでも?」
そう聞くマリーセ。
「いや、何もない。何もないのじゃ」
王はそう言って、笑っていた。
「テオドールよ」
王は言った。
「はっ」
頭を下げるテオドール。
「錬金術師を捕らえよ。生かしてな」
王は言った。
「わかりました」
テオドール将軍はそう言った。