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不遇の錬金術師  作者: 秀一
最終章 大戦編
119/146

119話 最後の一人


 その日の元老院が開始された。

 

 重装備のアルパ兵数人に守られた女性が一人。マリーセ王女だろう。化粧をしているが、歳をとっていて美人とは言えない。つまらなそうに議会を見ていた。

 

「本日はアルパの客人に来ていただきました。マリーセ王女です」

 レフさんが紹介した。拍手される。

 

「マリーセですわ。私から言いたい事は一つ。速やかに我がアルパ王国に降伏することを望みますわ」

 マリーセ王女はそう言った。

 

 ざわざわ……と騒がしくなる議場。

 

「諸君、私はテオドールと申す者。もしファーランドが降伏した暁には、君たちには危害を加えないと約束しよう」

 テオドール将軍はそう言った。

 

 その言葉を聞いて安堵する議員たち。しかし、信用できるだろうか。

 

「お聞きしたい事があります」

 僕は言った。

「何ですの?」

 あくまでつまらなそうに聞くマリーセ王女。

 

「降伏の条件は何でしょうか」

 僕はそう聞いた。

 

「ファーランド北部の割譲。それに加え、異種族を全てグランテイルに追放することですわ」

 そういうマリーセ王女。

 

 更に騒がしくなる議場。厳しすぎる条件だ。

 

「あなたたちにできるのは降伏のみ。さっさと終わりにしてくださいませんこと?」

 マリーセ王女はそう言った。

 

 僕は思った。これまでの道程。そして、カランという、新しい街。

 

 色んな人に出会い、別れ、そして育てて来た生徒たちの事を……。

 

 こんな条件、飲めるわけがない。

 

「その条件は飲めない!」

 僕は叫んだ。

 

「……はあ? つまり、私達とあくまで戦うと?」

 そう聞く王女。

 

「あなたたちは間違っている! 分断や差別からは何も生まれない! 色んな人が、種族が協力してこそ、未来を作り出すことができるんだ! もしあなたが、人を苦しめ、傷つけることをやめないなら、僕は戦う! 最後の一人になっても戦う!」

 僕は叫んだ。

 

 それはきっと、僕の、本当の声だった。

 

「そうだ!」「ファーランドをなめるな!」「俺も戦う!」「思いあがるな! アルパの者ども!」「俺たちはファーランド人だ! お前たちとは違う!」

 議員たちは、叫んだ。

 

「何を馬鹿な……」

 狼狽するマリーセ王女。

「王女、下がりましょう」

 テオドール将軍は言った。

「あなたたち、覚えておきなさい! あなたたちの運命は、死あるのみだ!」

 王女は叫んで、出て行った。

 


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