112話 無事
雨の中、僕は生徒たちを連れ、ファーランドへと退却した。
冷たい雨が、体力を奪う。疲れを感じる。しかし、戻らなければ……。
ファーランドへ辿り着いたころには、もう夜になっていた。灯りがともっている。
ファーランド城内には、多くの兵士たちが集結していた。シルヴィオさんやレフさんが、徴兵をしたようだ。レフさんも、ハイランドからファーランドへと戻っていた。
「おかえり、フェイ君」
そう言うレフさん。
「どうも。速いですね、レフさん。ハイランドの情勢は?」
僕は聞いた。
「思わしくは無いぞ。まあ、セラさんが居る限りは大丈夫だと思うが……」
そう言うレフさん。
「やあフェイ君。姫様がお待ちかねだよ」
シルヴィオさんがそう言ってくれた。僕は応接室に急ぐ。
そこには、コーヒーを飲んでくつろいでいる姫様が居た。良かった、無事だったか。
「姫様、ご無事でしたか」
僕はそう言った。
「フェイ、あなたこそご無事で。良かったわ」
姫様はそう言った。しかし消耗しているようだ。服も所々傷んでいる。
「一体何があったんですか?」
僕はそう聞いた。
「大変だったわ。と言っても、ベルクランドが攻めて来ただけだけどね。あっという間だったわ。爆石砲ってあんなに強力なのね。私は何とか船に乗って脱出できたけど、ミカエルとドミニクはどうなったか……」
そう言う姫様。悲しそうだ。
「そうですか。それにしても、大変なことに……」
僕はふらっとして、そのまま――、倒れた。
「フェイ!? フェイ! しっかり! フェイ!」
姫様の声は、意識の遠くで聞こえていた……。