110話 急報(前編)
イリスに着くと、既に敵は居なかった。
「フェイだ。門を開けてくれ!」
僕は叫んだ。確認に時間はかかったが、門は開かれた。僕達は入城した。
先の戦い、生徒たちには被害は無かったが、ファーランド兵はかなり戦死していた。怪我人も多い。治療が必要だ。僕はルシールさんの屋敷を訪ねた。
「ご無事でしたか? お疲れさまでした」
そう言ってくれたのは、ドワーフのカンデさんだ。僕や兵士たちに、暖かいお茶を振るまってくれた。
「ありがとう」
僕はそう感謝した。
「お父様が呼んでおられますわ」
カンデさんは言った。
イリスはまだ緊張感があるが、敵が居なくなったこともあって少し楽な気分になっているようだ。僕はルシールさんの部屋へと入った。
「お疲れ様です、ルシールさん」
僕は言った。
「やあ、フェイ君。お疲れ様、だな」
ルシールさんはそう言った。胸甲を付けているようだ。
「いよいよ戦争が始まってしまったな。ハイランドの情勢はどうだね?」
ルシールさんはそう聞いた。
「わかりません。セラさんが居るから、そう簡単には陥落しないとは思いますが……」
僕は言った。
「そうならいいがな……」
ルシールさんはそうつぶやいた。
もっとも、それは何とも言えない。敵はハイランドに集結しつつある。
「フェイ君。私はアルパを攻撃しようと思う」
ルシールさんはそう言った。
アルパへの攻撃。可能だ。海戦で優位がある。
しかし、それは……。
「街を焼く、ということですか」
僕は聞いた。
「そうだ。致し方あるまい」
ルシールさんはそう言った。
アルパは僕にとっての故郷だ。心苦しいが……、しかし、こうなった以上、やむを得ないのかもしれない。
「苦しい戦いですね」
僕は言った。
「そうだな、しかし……」
ルシールさんはそう言ったのだが。
「伝令! ルシール殿はおられるか!」
ファーランド兵がやってきた。
「何事だ?」
ルシールさんは聞いた。
「ルシール殿! それにフェイ殿も。丁度良かった!」
そう言う伝令。
「どうかしたんですか?」
僕は聞いた。
「はい! コーネリア城が陥落したとの事です!」
伝令は、とんでもないことを言った……。