108話 雨の中の死闘(前編)
ザーーーーーー……。
ひたすら雨が降っていた。陰鬱な空だ。
昼間だが、明るさは微妙な所。夜中程ではないが、視界は悪い。
とはいえ、文句を言っても仕方ない。僕達はひたすら東を目指した。
このあたりは、ミッドポイントと言う。何かがあるわけではなく、ハイランドとイリスの丁度中間あたり。アルパと戦う場合は、ここが隙間になるので問題だ。
「先生、敵です」
先行していたエルメが敵を見つけた。
「総員、身を隠せ」
僕は命じた。
ミッドポイントは草原で、身を隠す場所もあまりない。とはいえ、草が多く、草の背も高いため、身を伏せればわかりにくい。
敵がやってきた。もの凄い数だ。騎兵、歩兵、そして攻城兵器の類もあるし、補給部隊の姿も見える。
敵は明らかにハイランドを目指しているようだ。通り過ぎていく敵の群れ。
「先生、どうします?敵はイリスの攻略を諦めたのでしょうか?」
ユリアナは聞いた。
「だろうな。イリスの攻略なんてできるわけがない。とはいえ、このままハイランドに向かわせるわけにもいかないな」
僕はそう言った。
雨が更に強くなってきた。ドーン! と稲妻の音が聞こえる。
「水と風の精霊が暴れてるね。気が立ってるっていうか……」
ドロテアは言った。
「もっと暴れさすことはできる?」
僕は聞いた。
「やってみようか。精霊たちよ……」
ドロテアはそう言った。念じる。
あたりは暗くなり、敵の群れに雷が落ちた。兵器がへし折れ、混乱する敵。
「弓矢を射かけよう」
僕は言った。敵兵を矢で仕留めていく。
しかし敵もこちらに気付いた。猛然と襲い掛かってくる。
「敵だ! 攻撃! 攻撃!」
叫ぶ敵。
「槍構え!」
僕は槍を並べるように指示した。しかし、ファーランド兵の反応は遅れ、敵の攻撃を受けた。
「うわあああ!」
混乱する兵士たち。
「突撃! 突っ込めー!」
敵の騎兵が突撃してきた。僕は生徒たちを前進させ、槍を並べさせた。敵の騎兵は突っ込んでくるが、槍の攻撃で跳ね返す。
「ぐわあっ!」
刺殺される敵騎兵。
――雨の中、戦いが始まった。