106話 作戦会議
守備は援軍に任せ、僕は小屋で眠りについた。
翌朝になっても、まだ空は暗く、雨が降り続いていた。雨は敵味方を苦しめることになるだろうが、どちらかと言えばこちらが苦しい。火器の類を使えなくなるからだ。
僕は軽い朝食をとり、セラさんの屋敷へと向かった。
屋敷にはセラさんとおつきの二人の他、レフさんや、ファーランドの武将達、そしてカランの生徒たちとドロテア、アドリアンさんも集合していた。みんな夜中のうちに駆けつけてくれたようだ。
「フェイ殿。ずいぶん無茶をされたようですな」
そんな事を言うアドリアンさん。ちょっと怒っている?
「無茶はしてないよ。セラさんは無茶したかもしれないけど」
僕は言った。
「私も無茶はしていない。もっとも、フェイ君が私の剣を直してくれていなければ、勝てなかったがね」
セラさんはそう言った。
そうして、情報の共有と作戦会議が始まった。
はっきりしたのは、イリスが攻撃を受けていること。他にも敵の部隊がたくさん居る事。少なくとも、今のハイランドの周辺に敵は居ない事。
それぐらいだった。分からない事の方が多い。とはいえ、これ以上の情報は得辛い。今ある情報と部隊で、最善の行動をしなければならないだろう。
「ひとまず、イリスの救援に向かわねばなるまい。強力な敵が襲っているようだ。急がねば」
そう言うレフさん。
「しかし敵の意図は読めません。ここを手薄にするのは危険では無いですか」
ユリアナがそう言った。
「私もそう思う……」
エルメもそう言った。
「ここの守備は私に任せておけ。お前たちはイリスを救援すべきだ。もしイリスが陥落してしまえば、おしまいだ」
セラさんはそう言った。
確かにそうだ……。しかし僕は、逆の考えを持っていた。
「セラさん。敵は恐らく、このハイランドを攻撃してくると思います」
僕はそう言った。
「……? 何故だ? こんな事を言うのも何だが、あれだけ叩きのめしたのだ。奴らも馬鹿ではないだろう」
セラさんはそう言った。
「現在のアルパ王国は、異種族排除を国是としています。となれば、エルフであるセラさんはまさに標的。ここを手薄にするのは危険です」
僕は言った。
「……そうか……」
セラさんはうめいた。
「私も同意見だ。しかし、今イリスを失えば我々の負けは確実。いずれにせよ、救援は行わねばならない」
レフさんはそう言った。
「僕が行きます」
僕は言った。
「……良いのか?」
セラさんは聞いた。
「はい。セラさんは、ここを守ってください」
僕はそう言った。