104話 暗闘
エルマーは死んだ。
セラさんは言った。
「お前たちも、死にたいか」
冷たい声で、そう言った。
「ひっ」
怯える騎士たち。そして……。
「うわあああああ!」
「化け物だああああああああああ!」
「助けてくれええええええええ!」
そう叫んで、逃げて行った。
そうして敵は去った。そしてセラさんは言った。
「ふう……、門を開けてくれ」
門の守り手が門を開け、セラさんは中に戻った。
「ありがとうございます。セラ様……」
「さすがお強い!」
「お見事でした!」
歓声をあげるエルフたち。しかしセラさんは疲れたのか、屋敷へと戻って行った。
「強いですね、本当に」
僕は言った。
「ええ……」
エルフの女性はそう答えた。
セラさんはその後、深い眠りに落ちた。魔剣の使用と命を賭けた戦い。見た目以上に消耗したのかもしれない。
僕はエルフたちに命じ、夜間の守りを固めた。寝込みを襲われるわけにはいかない。パラディンは去ったが、残りの敵が居る可能性は十分にあった。ただでさえ、状況は掴めず、みんな混乱していた。
果たして敵は居た。先ほどのパラディンたちは囮だったのかもしれない。逆方向から、敵の傭兵部隊が近づいて来た。僕はエルフたちに弓矢を持たせ、城壁の守備を固める。
敵が近づいて来た。
「放て!」
僕は命じた。矢が地面に突き刺さる。敵は気付き、射程外へと退却した。
「フェイさん、どうしましょう。セラ様を起こしましょうか」
そういうエルフの男。
「いや、休ませてあげたい。僕達で何とかしよう」
僕は言った。
「そうですね……」
不安そうながらも納得した男。
この街はセラさんの街だ。それに頼りたいのもわかる。でも不眠不休で戦ってもらうわけにもいかない。
ひとまず敵は離れた。後は援軍が来るのを待つだけだ。