100話 ハイランドへ
僕が爆弾を開発したことで、戦局は大きく変わってきた。
これまで海賊にやられっぱなしだったのは、海賊の火矢による攻撃にてこずったことが大きい。しかし、火矢による攻撃は致命打とは言えないし、消火も可能だ。しかし爆弾による攻撃は致命的で、あっという間に船は燃え上がり、沈むしかない。というか、爆発に巻き込まれてしまえば大変なことになる。
一週間もすると、海賊はほぼ壊滅し、ファーランド領海に近づいて来なくなった。みんな命は惜しいのだろう。
僕はイリスの職人に頼み、強力な蒸気船を作り上げた。とは言え、これはもう必要ないかもしれない。なんかの役に立つかもしれないけど。
その後も、僕は軍事学校の教師として、生徒たちを指導した。みんな天才的で、僕なんかよりよっぽど優れている気がする。連携もできるようになってきたし、指揮官になる自覚も付いて来たようだ。
その日、晴れた日だったが、ノームのエドウィン君が部屋を訪ねて来た。
「失礼します」
緊張しながら、服を整えるエドウィン君。
「やあエドウィン君。どうかしたの?」
僕はそう聞いた。
「先生、例の爆弾の成功もあって、海賊たちもほとんどいなくなりました。しかし、あれを安定的に作るには、材料を確保する必要があると思います」
そういうエドウィン君。
確かに、それは問題だった。特に火薬の材料である硝石。他にも、金属なら欲しい物はたくさんある。
「そこでジャムルのみならず、ハイランドの周辺を探索して、生産力を上げようと思うのですが」
そういうエドウィン君。確かにそれは考えていた。
「だけどエドウィン君、ハイランドはセラさんの領域だ。彼女の了解を得なければならないだろう」
僕は言った。
「確かに。先生はセラさんともお知り合いでしたよね?」
そう聞くエドウィン君。
「そうだな……。会いに行ってみるか」
僕はそう言った。
セラさんには随分お世話になった。鉱物の確保はともかく、会いに行っても良いかもしれない。
「わかった。んじゃ早速行こうか」
僕は言った。
「了解です!」
エドウィン君は元気にそう言った。