33 ログウェルドの誤算
やっば。予約投稿したつもりで投稿できてませんでした!!!申し訳ない!!!
「何があったか大体想像はつくが・・・・何があった」
「分かってないじゃん」
俺たちの姿を見て、怪訝な表情を浮かべるログウェルド。もしかしたら、途中で引き揚げてきていいといったのは、自分が課した課題がレベル一桁には厳しいと感づいたのかもしれない。っていうか、アリスフィア。ハッキリ言うのはやめなさい。『あえて聞こう』ってことでしょ。
「いや実は―――――」
「なんと、運の悪い。丁度鳴動の時間に当たったか。しかも、階層を移動する瞬間に」
「そうなんですよ~」
「というか、それにしても探索の時間が長すぎではないか?大体、一ケタ階層なら一階層当たり十分あれば十分だろう」
ログウェルドが不可解というように俺たちを見やると、そんなことを言う。いや、いくら何でも一階層十分は無理があるんじゃないか?そう思い、ネリエルとアリスフィアに視線で聞いてみる。
「いや、私たちのレベル帯だと、今の速度で丁度いいと思いますけど」
「そういえば、お主らのレベルを聞いていなかったな。レベルと、迷宮での活動時間を教えてくれ」
「私は、9レベルになったぞ!さっきまでは4レベルだった!迷宮はまともに入ったのは2回目だ!」
「俺は、さっきので13レベルに。迷宮は2回目・・・・」
「私も、13レベルに。2回目だよ」
「なっ・・・」
俺たちのレベルと活動時間を聞いて、口をおっぴろげるログウェルド。普段威厳?があるというのに、口をあんぐりと開けているので、今はそれをかけらも感じられない。今までにないってくらい口を大きく開けているのではないだろうか。
「どうしたの、おじいちゃん?」
「どうしたもこうしたも・・・・お主らが驚きもせず言われるままに迷宮に行くから、迷宮での活動時間は100時間は超えているものだと思ったぞ・・・・」
「そんなわけないじゃんか」
『迷宮での活動時間が100時間を超えていると思っていた』というログウェルドの発言に対して、今度はアリスフィアが唖然として否定する。
「コラ、アリスフィア」
「普通、国家転覆の企みを止めるともなれば、20人構成のチームだとしたら最低でも一人30レベルは必要だ。50レベルくらいには達していると思っていたが・・・・」
一ケタなんて、かけらも思っていなかった。まさか、50レベルに達していると思われていたなんて。てっきり、身のこなしとかで大体の予想はついているものだと思っていた。
「そんなこと言われても・・・・なあ?」
「そうだよ。大体、アリスフィアとは知り合ってまだ2週間くらいしかたってないし。コルくんとも3週間がいいとこだしね」
「・・・会ってからそれだけしか経っていないのに、国家転覆の企みを阻止しようと?」
またも、口が大きく開かれた。ログウェルド、そんなに大きく口を開けてたら顎外れちゃうぞ。
「ネリエル、あまり危ないことをするんじゃない。アリスフィアがたまたま詐欺をするような悪い奴じゃなかったからいい物の、もし騙されそうになっていたらどうするつもりだ」
「・・・・それは、コルくんが騙されないように気を付けてくれるし」
え、俺そんなに詐欺耐性強くないよ?そんなに信用されちゃっても困るんだけど。第一、平和の国ニッポンに住んでいる身としては、あまり詐欺は身近じゃないし。
しかし、事実はそうでもない。仕事関係でも、プライベートでも、普段からネットを利用することの多かった鈴木浩太は、架空請求やウイルスバスターの偽警告、ウイルスの入ったファイルに誘導するページなどに触れる機会が多かった。
スマートフォンを使っている人もわかるのではないだろうか?たまにある、*この端末はトロイの木馬ウイルスに感染しました。早急にこのセキュリティソフトを――――――*というメッセージだ。外国語を翻訳ソフトで無理やり翻訳したような、拙い日本語のアレだ。
そう、インターネットで長い時間調べ物をする浩太は、実は詐欺に対する耐性がちょっとは備わっていた。100%引っかからないと言う訳ではないだろう。もしかしたら、何かの間違いで詐欺に引っかかることもあるかもしれない。しかし、一般人よりは多少騙されにくいし、警戒心もあるという事実はある。本人は自覚していないようだが。
「うーん、詐欺かあ」
言われると急に不安になってくるのが人間である。もしかして、すでにこの町で詐欺にあっているのではないだろうか?なんて考える。実際は詐欺にあうほど人とふれあっていないし、そもそも俺はオオカミだ。人間だった前世ならまだしも、今心配するのはおかしいだろう。
「コルくんならだいじょうぶだよ」
「・・・・なんで?」
「だって、あの3人組の冒険者と会った時も、ずっと警戒してたでしょ?」
「・・・そうかなあ」
思い返してみれば、警戒しすぎて危うく死ぬところだったんだ。そういうことがあったから、ネリエルと合流してからも、少し警戒してたのかもしれない。なるほど。俺は、詐欺に対して耐性があるっていうよりも、警戒心がちょっと高いってことか!
「思い出した?」
「まぁ、ネリエルは警戒心ってもんが皆無だろうし・・・・しゃあないなあ。俺が、ネリエルの分も警戒しといてやるか」
「さっすが私の相棒コルくん!」
「さすがはロマンの分かるオオカミ!」
ネリエルの相棒発言はこそばゆい感じがしてうれしかったものの、アリスフィアのロマンが分かるオオカミはちょっと分からない。ロマンが分かること関係なくね?
「・・・・今のレベルが9、13、13か。2階層はもうクリアーしそうなんだったな。3階層を攻略し、そのまま4階層に。ありえないが、レベルが16に達していなかったら、5階層には踏み込まないように。」
「え、今から潜るんですか?」
「今日はもういい。疲れているだろうし、魔力量ももう残っていないだろう。明日になれば回復するだろうから、それまでゆっくり休め」
ログウェルドの安心させるような優しい声音に、俺達は安堵する。もしこれから迷宮にもぐって来いと言われたら、ワンチャンを狙ってログウェルドに3人で襲い掛かっていただろう。その結果、多分俺たちは全滅していたことは想像に難くない。
「そういえば、おじいちゃんはどれくらいハーブを回収できたの?」
「ん?儂か。向こうに置いておいたぞ」
「置いておいたか。それなら、大した量じゃないんだな」
もしかしたら、この隠し部屋が満杯になるくらい作られてるかもしれないと覚悟して戻ってきたので、ちょっと安心した。置くというレベルなら、心配ないだろう。
「どわぁ!」
「どうした!」
「大丈夫?」
先に奥に走っていったアリスフィアが、悲鳴を上げる。なにかマズイことでも起こったんだろうか?不安を感じながら、アリスフィアの元へと駆け付ける俺たち。そして、部屋の中を見て絶句した。
「うっ。これは・・・・」
「・・・・すごい」
そこには、斜め上を見上げているアリスフィアと、天井まで積みあがったハーブの山があった。しかも、ピラミッド状という訳でなく、奥までぎっしりと詰められている様子である。もはや、ぎっしり詰められすぎて、部屋の形・・・・つまり長方形の形状になってしまっている。
「あーあ。」
「ありゃ」
しかも、下らへんのハーブは重さで少し潰れて、液のようなものが出てしまっている。
「これは使い物にならないんじゃないか?って、アリスフィア?どうしたんだ?」
「これは・・・・」
「ねえ、大丈夫?また、グロウの魔法で増やせばいいんじゃない?」
「待てよ、確か」
真剣に考えこむように顎に手をやると、ぶつぶつを何かを考えるアリスフィア。言っちゃ悪いけど、アリスフィアは馬鹿な女の子タイプかと思ってた。まさか、ちゃんと考えるタイプだったとは。
「ちょっと、店に行ってくる!」
「あっ、ちょっと!」
「アリスフィア!」
ハッと何かに気づいたようにピクッと反応すると、アリスフィアは走って『店』に行ってしまった。アリスフィアが『店』と言ったときは薬屋の店主さんのところに行く時だ。何かを思いついて、意見を求めに行ったんだろう。実は、ネリエルや俺以上に考えていて、店主さんに相談する回数も、時間もアリスフィアが一番多いのだ。
「きっと、何かを考えついたんだろうな」
「私たちに相談してくれてもいいじゃん・・・・」
「ううむ。あの子は、ああ見えて賢いな」
「うぉっ!静かに背後に近寄らないでくださいよ」
いつの間にか背後に近づいていたログウェルドが、そうつぶやく。アリスフィアが賢いのは良いけど、背後に静かに近づくのは本当にやめてほしい。おかげで俺は、少し寿命が縮む思いだ。
「直感型・・・アイデア型・・・熟考型。全てをバランスよく兼ね備えたタイプだな。磨けばかなり化けるぞ。まさしく、パーティー内の重要な役割である盗賊にピッタリだろう。斥候の際にも、機転が利き、臨機応変に対処できるようになるだろうな」
「・・・・あの一瞬でそこまで分析できるか?」
「いや、なんとなくそう思っただけなんじゃないかな。でも、あってる気がする。おじいちゃんだし」
おじいちゃんだし。その言葉で、この人がいままでどんなムチャなことをしてきたかっていうのが少しわかった気がした。『なんでもおじいちゃんだし』で片づけられるような気がしてきた。
『このあいだ岩を片手で持ち上げてたよ?』
『本当に?まあ、おじいちゃんだし』
『スライムを鼻息で倒してた』
『ええ・・・・おじいちゃんだし?』
『滝行してて、流れ落ちてきた丸太を頭でカチ割ってた』
『おじいちゃんだしねー』
何て言う風に。いや、もうそれは人間じゃないんじゃないだろうか。そのうち、散歩してきたというように邪神倒してきたーと言いそうだから、本当に怖い。何者なんだろうか、ログウェルドさんって。不思議。武神と言われても違和感ないぞ。
アリスフィアの事を考えていたのに、首をかしげる、俺。どこで考えていることがログウェルドに変わってしまったのか。ここ最近ログウェルドの事を考える機会が増えてきた気が・・・・まさか、恋?なんて馬鹿なことを考え、自分の想像に殺されかけるのであった。




